才能の時間

side.烏間惟臣



俺は防衛省の烏間惟臣だ。
今は椚ヶ丘中学校3年E組の表向きの担任として此処にいる。

シロと呼ばれる人物と、本来の担任(生徒達には「殺せんせー」と呼ばれている)と同じ触手を持つ生徒、堀部糸成の件が過ぎ、生徒達の訓練を指導していた時に現れたのは、政府が派遣した新たな殺し屋『レオン』と、同期である鷹岡明だ。

生徒達とのやり取りを見て、教官の座を譲った方が彼らの為だと思っていたが……。


『まぁ、それまでだったって事だな』

『君が彼らに対する感情が、ね』


レオンの言葉に動かされた。
人に言われないと気付かないなんて……な。

この後に鷹岡と渚君が対人する事になったのだが、俺があの日感じた“もの”を信じて彼を選んだ。
その感じた“もの”は間違いなく『殺気』であり、彼が見せたのは殺し屋としての才能だった。
この才能を開花させてしまっていいのか?……これを決めるのも、彼らに必要とされた俺の判断に委ねられるのだろう。



「や、やらせるかそんなこと……!俺が……!!」



生徒達に言葉を掛けていた時、鷹岡が起き上がっていた。
かなりの力で攻撃したはず……!

背中を見せていたこともあり、完全に隙を見せてしまっていた俺は反応に遅れてしまった。
腕を振り上げた鷹岡に咄嗟に防御しようと腕を交差させて、来る衝撃に備えた瞬間だった。



「!!!」



鷹岡の横を何かが通り過ぎた。
その何かは“ナイフ”だった。



「いい顔するじゃないか、鷹岡とやら」



聞き覚えのある声が鷹岡の名を呼ぶ。
振り返ると黒いマントで身を隠した人物……『レオン』がこちらへ歩み寄って来ていた。
まさか、ナイフを投げたのはレオン……!?



「全く……。最後まで油断しないで頂きたいですね、烏間殿」



フードを深く被っていて顔は見えないはずなのに、何故か目が合っているような感覚がした。
レオンは鷹岡の方へと首を動かす。



「期待外れだ。とてもつまらなかった」



鷹岡へと放たれたその言葉を色で表すのなら“無色”だ。
尻もちを着いた鷹岡と視線を合わせるように、レオンは片膝を立てて屈んだ。



「諦めの悪い男は嫌いではないけれど……度が過ぎたら醜いだけだ」



鷹岡の腹に手をつき、顔を近付けるレオン。
レオンが近づく度に鷹岡の表情は青ざめていき、端から見ても怯えているようにしか見えない。



「自分の立てたルールで負け、それに怒る……。うん、実に滑稽だったよ。だけど、つまらなかった」



ある程度まで近づいた後にレオンは顔を遠ざけ、鷹岡を見下ろすように立ち上がった。
暫く見つめた後、投げたナイフを拾いに鷹岡から離れた。

その後、理事長が来て鷹岡は解雇された。
理事長と鷹岡の方に気を取られている間にレオンはその場からいなくなっていた。
まるで最初からいなかったかのように……。



才能の時間 END





2021/01/04


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