才能の時間



「はは……っ!!面白い、面白いな……!!」


僕の視界に映るのは、鷹岡を怯ませて笑う潮田渚。
と、ターゲットが一瞬でその場から消えたと思えばグラウンドにいた。うーん、速くて捉えきれない。

ターゲットは潮田渚からナイフを奪い取り、ボリボリと食べている。……食べている!?
あ、そういえば政府から貰った資料には、ターゲットには金属が効かない、みたいなことが書かれてた気がする。



「分かってたの?渚のあの才能を……」

「たまたまさ。あの能力……本気でなろうと思えば化けるぞ」



他の生徒達に囲まれている潮田渚を見つめながら、イリーナの質問に答えた。
性別は男らしいが、あの容姿では女に見えても可笑しくない。
殺気を隠す能力、殺気で相手を怯ませる能力、多少の演技力にあの顔……暗殺に使える才能ばかりだな。



「!」



怒りを感じ、視線を移す。
その視線の先にいたのは、潮田渚に敗れたことで怒っている鷹岡だった。



「このガキ……!父親も同然の俺に刃向かって、まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!?」



まあ気持ちは分かる。
自分より下の者……弱い者に負けた事は恥晒し同然だしね。プライドはズタズタさ。
先程の結果がまぐれだと、彼自身の才能に負けた事を認めたくない鷹岡は潮田渚に再戦を申し込んだ。



「確かに、次やったら絶対僕が負けます。でもはっきりしたのは……僕等の担任は殺せんせーで、僕等の教官は烏間先生です。これは絶対譲れません」



潮田渚は更に話を続ける。
“父親”という概念を押しつけてくる鷹岡よりも、自分たちをプロとして扱う烏間殿の方が心地が良い、と。



「本気で僕等を強くしようとしてくれてたのは感謝します。……でもごめんなさい。『出て行って下さい』」



頭を下げた潮田渚に、鷹岡の怒りは頂点付近まで達しているだろう。
……まずいな、これは放置して置いては怪我人が出る。
ナイフを握り、鷹岡に向けて投げようと思っていた瞬間だった。



「ぐわあっ!!?」



潮田渚と鷹岡の間に割って入ってきたのは烏間殿だ。わあかっこいい。



「身内が迷惑をかけて済まなかった。後の事は心配するな、今まで通り俺が教官を務められるよう上と交渉する」

「や、やらせるかそんなこと……!俺が……!!」



……はぁ。
簡単に背中を見せてはいけないよ?
僕等の世界で背中を向けることは負ける事とほぼ同じなんだから。
未だに握っていたナイフを鷹岡に向かって投げた。



「!!!」



立ち上がって再び殴りかかろうとした鷹岡の顔の横を通り過ぎていったナイフ。
……うん、今日も僕の投擲は素晴らしいね。



「いい顔するじゃないか、鷹岡とやら」



態と足音を立てながら近付けば、あらまあ面白い顔。
その表情……大好物だよ。



「昨日ぶりだね、鷹岡明」



ニコリと笑って見せたけど、フードで隠れて見えなかったかな?
恐怖に染まった鷹岡の顔を見て、緩やかな弧を描いていた口がニヤリと歪んだ。





2021/01/04


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