才能の時間



暑くなってきたこの頃
そろそろ受けていた依頼も片付きそうだ。本格的にE組生徒について簡単に探っておかないとね。

という訳で僕がいる場所は……


「へぇ、防衛省の人間から直属に指導して貰えるのか」


勿論この場所、椚ヶ丘中学校E組校舎である。
何を見ているのかというと、授業中である生徒達を観察している。
授業を仕切っているのは『烏間 惟臣』、防衛省から派遣された国家の犬である。

グラウンドが綺麗に見える木の枝に乗り、様子を眺める。
観察に意味はあるのかって?こういう時に性格の違いという奴が出たりするんだよ、意外とね。

ま、動きとしては一般人にしては中々じゃないかな。僕にはまだまだ及ばないけどね。
彼らの様子を見て感想を心の中で述べていた時だった。


「!!何だ……?」


何かを感じ取り、反射的に視線をその場所へと移す。
感じ取ったのは“殺気”だ。一体誰が……。


「あの人間は確か……『潮田 渚』」


名前くらいなら覚えている。
それに、個人的に容姿が好みなので興味があった。

潮田渚
性別は男性だが、その容姿はまだ中学生であるのもあり、中性的でとても可愛らしい。
しかし、ただの一般人がこんな殺気を出せるか?
潮田渚は烏間とやらにかなり強く投げられたらしく、痛む所を抑えている。恐らく、あの男性も僕と同じであの“殺気”を感じ取ったのだろう。
潮田渚について更に興味が湧いたよ。


「そう言えば……まだ挨拶をしていなかったな」


こちらに向かって歩いている…正確には校舎に向かってきている防衛省の男性を見て、思い出したように呟く。
他の防衛省の人間とは何度か対面したけど、この男とは何にも話してなかったと思う。名前だけ聞いたくらいだったはず。まぁ、こちらで色々と簡単に調べさせてもらったけど。

烏間惟臣
所属、防衛省特務部
ターゲットを監視するために派遣された人間だ。どうやらかなり良い成績を残しているらしい。興味ないけど。

頭の中で烏間惟臣という人間のデータを浮べながら、その人物の目の前へと降り立つ。
急に現れた僕に驚いたのか、短く驚きの声をあげた。


「初めまして、または数日ぶりかな?防衛省の人間」

「君は依頼でこちらに来た暗殺者の一人、レオンだな。知っているようだが、俺は烏間惟臣だ」

「ではこちらも。殺し屋をやっています、レオンです。こちらでは苗字名前と名乗るので以後お見知りおきを、烏間殿」


実は一度だけこんな呼び方をしてみたかったんだよね。日本には指で数えられるくらいしか訪れたことがないからね。
烏間殿の後ろから見えるE組生徒達の騒ぎ声がうるさいが、気にしなければ良いだけの話だ。

互いに自己紹介を終えた所、背後に気配を感じた。
チラリと後ろを見てみると、思った通りそこには人がいた。


「よっ、烏間!あれ、お取り込み中だったか?」

「……鷹岡。いや、別に」


烏間殿の知り合いか?
彼の口から出た名は確か…鷹岡。
身体ごと向きを変え、鷹岡と呼ばれた男性をはっきりと視界に捉える。

向こうと視線は合わない。
少しずつ気温が上がってきている季節に合わない格好…全身を覆い隠すほどのマントに深いフード。見ている人からは暑苦しい、と思われるだろう。
向こうも思っていたより僕に興味はなかったようで、視線は烏間殿の方へ向いている。

しかし、口調からはなんともなさそうに…人の良さそうな顔や態度を出しているが僕は騙せないよ。
その笑顔には“裏”がある。
確証はあるのかって?経験から感じた、“直感”という奴だ。
僕の直感は高確率で当たるのさ。


「君もここの生徒だろ?ほら、ケーキだ!」


烏間殿の知り合いと知れば生徒達は特に疑いもしない。
鷹岡が持ってきたのだろうケーキやら何かを与えられている生徒達は僕には餌付けされている動物にしか見えない。
……言い方がアウト?事実だろ。


「ふん、毒でもいれているのかい?」

「そんなもの入れるわけないだろ〜?俺達は“家族”なんだから」


家族……だと?笑わせる。
口元がニヤリと形を変えた。


「家族、ねぇ……。では、自分の親を殺す子は好きかい?」


僕の質問に一瞬だけ固まる鷹岡。
どうやら動揺しているようで、言葉を詰まらせていた。
まあ、回答を求めているわけじゃないけどね。


「あの男……裏があるように見える」


それだけ伝え、烏間殿の横を通り過ぎる。
少し離れた位置で首だけ振り返り、存在感のある黄色い巨体…ターゲットを視界に捉える。
僕の視界に映ったのは、勢いよくスイーツを食べているターゲットだった。





2020/12/30


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