才能の時間



E組の子供達を知る為に、今日もE組の生徒達の授業の様子を盗み見ていた。


「あれ、烏間殿がいないな……」


昨日その場にいた烏間殿の姿が無い。
その代わり、とでもいうようにその場にいたのは鷹岡だ。
まだ授業の内容には入っていない、恐らくオリエンテーションでもやっているのだろう。あの場に鷹岡とやらがいると言う事は、烏間殿と交代で指導していくのか、そもそも鷹岡に一任されるのか……まぁ、受けないけど。受ける必要も無いと思うけど。


「……!」


視線を感じる。……下か。
目線を下へ下げるとそこには人がいた。


「ねぇ。あんたシロの助手でしょ?」

「……君は確か」


見覚えのある顔。
確か名前は……『赤羽 業』
よっと、と言いながら僕の近くの木の枝に登ってきた。


「何してるの?監視?」

「……」


相手にする気はないので無視する。
視線をグラウンドに向けたまま、何が始まるのか様子を窺う。
……窺いたいのだが、隣にいるこの男子生徒が気になって仕方ない。だってずっとこっち見てるんだもの。視線が痛い。


「あっ」


触ろうとしたのだろう。だがそう簡単に触らせやしない。
こちらに伸ばした手が空を切ったことに少し驚きの表情を見せる。


「触らせてくれないんだ?」

「行かなくていいのか。もうじき授業が始まるだろ」

「やだよ〜。俺、あのせんせーの授業受けたくない」

「あの先生、というのは鷹岡の事か?」

「そう」


なるほど、サボりという奴か。


「で、何故受けたくないんだ?」

「えー?何か嫌だ」

「……なるほど。何となくだが、君の気持ちは分かる」


もしかしたら、彼は何かしらを鷹岡から感じているのかもしれない。
僕の様に、何かの感を持っているのかもしれない。

しかし、いつまで此処にいる気だ?邪魔だからさっさと何処かへ行って欲しい。
……いや、僕が移動すれば良いのか。
思い立ったら即行動。屈んでいた身体を起こし、木の枝の上に立つ。


「あれ、どこに行くの?」

「場所を変える」

「えぇなんで?このまま俺の話し相手になってよ」

「断る」


僕は暇じゃないんだ。君に構っている場合ではないんだよ。
ターゲットに感づかれてしまう前に違う場所へ移動した。



「……ビッチ先生が言ってたイメージとは違ったなァ」



そんなことをあの赤髪の男に言われていたことを、僕は知らない。





2020/12/30


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