椚ヶ丘中学校3年E組

side.イリーナ・イェラビッチ



私はイリーナ・イェラビッチ。プロの殺し屋よ。
5月に入ってすぐに、この椚ヶ丘中学校3年E組に英語教師としてやってきた。
このタコを殺すために政府から依頼された為、此処にいる。
……ちゃんと、あのタコを殺る機会を窺っているわよ。遊んでなんかないわ!

…と思いながらも日々を過ごしていると、ある日政府から転入生が派遣された。名前は『堀部イトナ』。
その人物の保護者と名乗る人物『シロ』ともう一人……


『それは言えないなぁ』

『私はあの方の助手です』


マントで身体を覆い隠していて、体格で性別を判断する事が難しく、フードを深く被って顔は分からない人物。今回転入してきた堀部イトナと、彼の保護者と名乗るシロと共にその人物はE組校舎へとやってきた。
助手と言われていた人物は自分の名を名乗らなかった為、名前でも性別を判断する事ができなかった。
しかし、それだけなら良かった。


「声を自在に変えることができる……」


その事が頭に引っかかっていた。
シロの助手、と名乗ったあの人物は自分を名乗る前に、タコの言葉に返事をした。それが、あの人物の第一声だ。
その声がシロと名乗っていた人物の声そのものだったのだ。


「どうしたの、ビッチ先生?」


先程の人物に対して考え事をしていたが、どうやら声に出ていたらしい。


「さっきの……、シロと名乗った人物の助手、って言ったあの人物…。私、覚えがあるわ」


『声』
そのワードで引っかかる人物は私の中では1人だけ。
……2年前、急に連絡が途絶えてしまった人物だ。


「私と同じ……プロの殺し屋よ」

「殺し屋……!?」


私の発言に教室には先程の人物の事で溢れかえった。

声を自在に変化させられる……即ち、『声帯模写』と呼ばれるものが出来る人物…。
私が知る中ではあの子しかいない。


「『レオン』……」

「レオン?」

「ええ。あの人物は、恐らく『レオン』と呼ばれている殺し屋よ」


そうよ。
私とあの子が初めて会った時も、全身を隠せるほどのマントを着ていたわ。
どうしてすぐに気付かなかったのかしら。
……2年も会ってなかったからなのか、それともあの子の情報抹消が素早いからか…。


「その話、詳しく教えて頂けますか」

「……そうね。友人としてはあまり言いたくないのだけれど…」


あの子は自分のイメージ像に敏感だ。
それが変装する時に使えるからだ、と。


「これだけは言える。……変装に置いて、あの子の右に出るものはないわ」


……そして、


「あの子は……『狂人』よ」


初めて会った時の光景をよく覚えている。
私の脳裏にあるのは、大量の人間だったものの血を浴び、ナイフを片手に笑っていた少女だった。


椚ヶ丘中学校3年E組 END





2020/12/30


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