椚ヶ丘中学校3年E組
現在、夕方になったくらいの時間帯。
この時間帯を学生達は『放課後』と呼ぶらしい。
一日ターゲットを観察して、ある程度の事を理解した。
まず、ターゲットは生徒達に『殺せんせー』と呼ばれている事
ターゲットの好みは『甘い物』だと言う事
……割と変態だと言う事
普通、生徒達の前で成人向けの雑誌は読まないと思うのだが……。
で、今目の前に映っているボロボロの校舎ではある事が行われようとしていた。
今朝、校舎の一部分を破壊して入った堀部イトナはターゲットに勝負を申し込んだ。……ターゲットの事を『兄さん』と呼んで。
「……それも、僕に対しての嫌がらせの一つなのかい」
シロ。
……あんたについて詳しく調べる必要がありそうだ。
「触手の弱点……、ここで勉強させて貰うことにしよう」
シロに強制的に渡された(押しつけられた)拳銃をマントの中で握り、“もしもの時”に備える。
シロに渡された通信機とは別に、反対側の耳についている盗聴器で校舎の中で行われている事を把握し、次々と暴露されていく“触手の弱点”を頭にインプットする。
それを見ているときに思い出すのは、この勝負が始まる前に交わしたシロとの会話だ。
『来て損はなかっただろう?』
『……どういう意味です?』
『これから行われる暗殺で、君も学べると思ってね。『触手』について』
あの発言は、僕が堀部イトナと同じであることを知っていると言っているのと同じだ。
……やはり、あのシロとやらは全てが終わった後に____
「!」
大きな音がして、考え込んでいた意識から我に返る。
その方向を見ると、何かに包まれた堀部イトナが転がっていた。
……脱皮。脱皮するのか、ターゲット。
聞こえてきたターゲットの言葉で、彼が包まれていたものが何なのか分かったが……もう何でもありだな。
状況を理解したと同時に通信が入った。
『イトナはどうなった』
「……状況を理解出来ていないようです。ターゲットを見て固まってます」
僕が見たままの情報をシロに伝えた瞬間、堀部糸成から黒い何かが飛び出してきた。
「……黒い触手」
あれが、シロの言っていた“もしもの時”という奴か。確かにあれは、どう見たって自我を保てていない気がする。
……素の姿の彼を知らないからなんとも言えないけど。
「ま、あれに当たって死にたくないね。……ターゲットにしか目がないみたいだから、殺される事はなさそうだけど」
全く、どう扱ったらあのような人格を作れるのかね。
シロの教育にいろいろと思うところはあるけれど……今はやるべき事をこなさないとね。迷いなく銃口を堀部糸成に向け、発砲した。
校舎の窓枠に足をついて、ターゲットに飛びつこうとした彼の背中に銃弾が直撃。
背中を押されたように倒れ、堀部イトナは気を失った。
2020/12/30
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