期末の時間 2時間目
「はぁ、誰もかれも勉強、勉強。さすがの僕も、あの空気には耐えられない」
現在、次の授業までの空白の時間……休み時間なのだが、どうもE組は最後の期末テストに対し、やる気満々みたいで。休憩時間だというのに勉強している。
新鮮な空気が吸えそうになかったから、外に出てきたんだ。
「……うん?」
やっと外の空気を吸えると思っていたところで着信だ。うーんっと、この携帯は……E組に転入する際に購入したものか。
であれば、E組の誰かが僕がいないことに気づいて電話をかけてきたってところか。ただ休憩のために外に出ただけじゃないか。心配性だな……って。
「珍しい人物からだ」
画面に表示された名前に驚きつつも、無視する理由もないので通話を開始する。
「……この時間はまだ授業中じゃないのかい___学秀?」
『それは僕のセリフでもあるんだが、名前』
そう、僕に電話をかけてきた人物はE組の連中ではなく、本校舎の人間……A組の学秀からだった。
なんで彼が僕の電話番号を知っているのか、だって?
先日の文化祭で連絡先を交換したんだよ。ちなみに向こうから言われた。決して僕が欲しいと言ったわけではない。
『まあいい。少し話したいことがある。僕と同等の能力を持つ君だからこそ、話したい』
そんな学秀だが、どうやら僕に何か話したいことがあって電話したという。さて、僕の興味を引く内容だといいけれど。
「相変わらずの上から目線なことで。暇だから聞いてあげよう、どんな話かな?」
『そっちが上から目線だろう……それに、授業の方はいいのか?』
話したいことがあると相談を持ち掛けたというのに、こちらの心配か。君は話を聞いてほしいのか、そうでないのかはっきりしたほうがいい。
でもまあ、彼の性格はここ何回か会話をしたことで分かったことがある……学秀は人を頼ることができない性格だ。
そんな彼が僕には話せるかもしれないと思い、こうして電話をかけてきた。
「僕のことはいい。ほら、話してみろ、周りには誰もいないから」
だったら僕が大人になってやろう。
誰かに打ち明けなければならない、そう思った彼の気持ちを汲んであげようじゃないか。
『……さっき、暇だと言ったな』
「うん、言ったよ」
『なら、今から会えないか』
ほう。電話越しではなく、直接話したいと。
僕は彼の話を聞くと言ってしまったから、断ることはできないね。
それに、今のE組の教室は息苦しい。息抜きとして、少し離れるくらいいいだろう。
「構わないよ。その代わり、僕が一目で分かる場所に立っているんだ。本校舎については全然知らないからね」
『なら、E組校舎へ続く道付近に立っておこう。それなら分かるだろう?』
「ああ。じゃ、移動するから約束通りそこで立ってろよ」
それだけ伝えると、僕は通話を切った。
何か言いかけてた感じもなかったし、大丈夫だとは思うけれど、何か言い忘れがあれば直接会うんだし、その時に教えてくれるだろう。
「荷物はー……早退するわけじゃないからいいか。ま、俗に言うサボりというやつにはなるけれど」
それに、僕は周りに人がいると集中できないんだ。
だって自分の好きなようにできないだろ?
紛れたくても、周囲にいるのは苗字名前を知る人しかいない。紛れることができないから、いつもの人混みに紛れることも意味がない。
僕は裏でこっそり努力する人だからさ。最近は別の作業もやっているから、並行することにはなるけれど……少しラファエルに任せて、ばれない程度に学生のふりをしなければ。
「さて、学秀は僕に何を話したいのかな?」
僕が面白い、または興味を引く話だったらいいなぁ。
そんなことを思いながら、僕は山道へと続く道を歩き始めた。
2024/03/16
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