死神の時間



「なんで僕が殴られなくちゃいけないんだ……!」

「連帯責任だからだよ、名前」

「ごめんな……」


ターゲットに呼び出されたと思えば、「連帯責任なので」と言われて頬を殴られた。とは言っても、威力はそこまでなく。ペちょんって如何にも弱そうな音だったから、全く痛くなかったんだけど、問題はそこじゃない。殴られたことである。威力がどうとかじゃない。


「で? なんでこんなにも僕の周りに人が集まってるのかな」

「ちょっと聞きたい事があって」


皆を代表しメグが僕に問いかけた。……僕に聞きたい事、か。


「答えられるものなら」

「えっと、ビッチ先生についてなんだけど」

「イリーナについてか。いいだろう、なんだい?」

「ほら、4日前ビッチ先生の誕生日だったでしょ? だからその、プレゼントどうしようか話し合ってて」

「それで僕からのアドバイスが欲しいと」


正直、イリーナの名前が出た時点で察しが着いてたけど。誕生日プレゼント、か。正直彼奴は人の好意は大好きだし、貢がれることが好きだから、本気で嫌なものじゃなければ受け入れると思うけど。

……うーん、そうだねぇ。


「そういうのは、君たちが選ぶことが大事じゃないのか?」

「え?」

「選ぶプレゼントに意味がないとは言わない。けど僕は、贈ることが1番意味があると思うよ」


僕がメグの問いかけに対しそう答えると、周りから「お〜!」やら「なるほど!」やら「かっこいい」など……賞賛の言葉ってことで受け取って良いのかな?


「でもまぁ、参考程度には教えてあげよう。君たちが買えるかどうか分からないけどね」

「なんとなく予想が付く気がするけど……教えて?」

「イリーナは綺麗なものが好きだ。……さ、この大雑把なヒントで君たちは何を思い着いたかな?」


僕の言葉に考え込む彼らを置いて僕は教室を後にする。とは言っても、出入り口の傍で様子を窺うつもりだけど。


「綺麗なもの……やっぱりアクセサリーとかかな」

「俺もそれくらいしか思い着かねぇ……」

「とりあえず外に出て見て探しに行ってみよっか。苗字さんのヒントがアクセサリーだけとは限らないかもしれないよ?」

「よし、それじゃあ町に降りてみるか!」

「買い物班、頼むぜ!」


どうやら探しに出かけるらしい。おっと、此処にいては見つかってしまうな。物陰に隠れると、数名が僕に気づかないまま通り過ぎていった。ふふん、僕の気配遮断スキルは完璧だね。

しかし、班で分けているのか。この僕に隠して何か計画を立てているのか。それもイリーナ関係で。……なんでイリーナなのかって?
だって彼ら、イリーナの誕生日プレゼントについて僕にアドバイスを貰いにきたんだ。となれば間違いなくイリーナ関係で何かコソコソと計画を立てているに違いないだろう?


「じゃあ私達はビッチ先生を呼びに行ってくるよ」

「おう! じゃあ指定した場所でな!」

「やっぱり烏間先生からのプレゼントに期待しているだろうし、買い物班もそこら辺りで探すはずだから……」


僕が計画メンバーに入っていないのは、おそらく既にプレゼントを渡したからか?
だからアドバイスを貰いに、ねぇ……。なるほど?


「さて、僕のアドバイスを経て彼らが何を選んだのか……この目で見てやるとするか」



***



教室で一人、パソコンに向き合って作業して暫く。買い物班は花束を持って帰って来た。

なるほど、花か。確かに女性は花が好きだ。それに花というものは綺麗なものに値するだろう。イリーナも好きなはずだ。

それに花というのはそれぞれに意味……花言葉というものがあるらしいじゃないか。僕は興味ないから知らないけど。……そういえば、彼奴は___。


「___っ、!」


項に走った痛み。咄嗟に項を押さえ、唇を噛む。……思いっきり噛んだから、痛みで少しずつ冷静さを取り戻した。


「はぁ、唇じゃなくて指を噛めば良かったな」


けど、そんな事考えてたら今頃……いや、この事を考えるのは止めよう。とりあえず、この教室を半壊にすることは避けられた。

少し前、死神という言葉を聞いてから触手が制御しにくくなっている気がする。いや、死神という単語に反応しているんじゃない。その死神と名乗った人物が、僕の知る人物・・・・・・の可能性が高いから反応しているんだ。

やろうと思えば誰もが死神と偽装できるさ。ただし、死神の強さを知る者に見つかればすぐに偽者だとバレる。
だからこそ、ロヴロの言っていた内容や彼の怪我が物語っているんだ。……死神とほざく輩が、もしかしたらって。


血の味がする唇を少し気にしつつ、僕は机の上に置いたパソコンの操作に戻る。

……え?
結果を見なくていいのかって?

面白そうだけど、暇を作れないくらい僕は忙しい。人が出払っている今、進められる作業は進めたいんだ。そう思いながら彼らの帰りを待っていた時だ。



「名前〜〜!!」



音を立てて教室に入ってきた桃花が泣きつく勢いで飛びついてきた。気配は感じていたから、咄嗟にやっていた作業を見られる前に画面ロックをしたからセーフ。


「なんだよ桃花」

「ビッチ先生の誕生日プレゼント計画、失敗しちゃったぁ……!」


パソコンを閉じながら問いかければ計画失敗の声が返ってきた。横目を見ればゾロゾロと教室に入ってくるE組メンバー。雰囲気からして桃花の言ってる事は正しいようだ。


「まずは内容を聞こうか。どうやら僕にも隠して計画していたみたいだし」

「ぎぐっ」


態と隠していたのは別に気にしていない。アドバイスしといて失敗したことの方が僕はきになる。


「じゃあ私から話すよ」

「よろしく、メグ」





2023/05/02


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