名前の時間



体育の時間



今日の体育の内容は相手の背中にある的にペイント弾を命中させる、というもの。
その狙いは、背後からの狙撃とか、単純に命中率の向上とかもあるだろう。
なんせ、相手は動いているのだから。

そんな中、僕は高みの見物でE組の実力を見ていた。
すると突然携帯から電話がかかってきた。


「誰だ」

『俺だ、「カメレオン」』

「……『コロコロ上がり』か。なんだ?」

『今、空いてるか』

「『堅物』がいないからね〜。そっちには?」

『さっき通り過ぎた。もうこちらには来ないだろう』

「なるほど。ということは君も僕も出番は終わったわけか」

『なら暇だな。どうだ? 今から俺たち・・・でターゲットに攻撃を仕掛けるのは』

「……ほう、着いてこれるかい?」

『当然。まだお前に着いていけるほどの力はある』

「行ったな。ならば先に向かうから、僕を探してみたまえよ」


そう言って電話を切り、木から下りる。
静かな空間から、堅物がいるであろう位置を探る。


「……右辺りが騒がしい。そこら辺にいるみたいだな」


現在のターゲットの位置であろう場所を探り終えた僕は、木の上へとジャンプして上った。
音を立てないように堅物がいる場所へと近付く。


「……いたいた」


どうやら他の奇襲から逃れ、一時的に隠れているらしい。
コロコロ上がりが来る前に片付けちゃおうかな。

ハンドル銃型だから、自分の視力だけで狙いを定めなければならない。
でも、そんなのは僕にとって出来て当たり前。
例えピストル銃であろうとも、そこの感覚は狂わないさ!


「……来たな、カメレオン!」

「! へぇ」


ちょっと見つめ過ぎちゃったかなぁ。
こちらを振り返った堅物は僕を目視して確認した後、逃走した。
それを逃がすわけにはいかない。

殺し屋がターゲットを逃すことは、失敗と同時に暗殺者としての名を汚している事と同義なのだから!


「! 速いなッ」

「スピードなら、誰にも負けませんッ!」


堅物との距離を詰め、両手に銃を持つ。
そして、ナイフを振るうように銃を振りかぶった。
まさかこのような攻撃をしてくるとは思わなかったのか、堅物の反応が少し遅れた。
ま、躱されちゃったけど。


「ほらほら、逃げないといつか撃っちゃいますよ?」

「でも隙を与えてくれないんだろう?」

「当たり前……ですッ!」


僕はそう言って、銃を発砲した。
しかし、その弾は堅物の横を飛んでいった。


「外すなんて、意外だな」


……僕が弾を外す?
違うね、それは態と・・だ。


「!」


僕が撃った方向とは逆から弾が飛んでくる。
堅物の背後には、僕と同じくハンドル銃を両手に持ったコロコロ上がりがいた。


「なんだ、間に合っちゃったか」

「約束しただろう」

「まあ……ねッ!」


一気にターゲットへと距離を詰め、再び銃を振りかぶり攻撃を仕掛ける。
外からコロコロ上がりが銃を発砲する。

堅物にとっては状況が悪いだろう。
この僕が相手なんだ。
向こうは攻撃を一切しないため、反撃されることがない。
……だから、有利なのはこっちなんだよね!


「チッ」


僕とコロコロ上がりの攻撃を躱そうと、堅物が木の枝に向かって飛んだ。
どうやら中へ上ろうって言う考えらしい。

___残念。


「空中は身動きを取りにくい」

「!」

「僕達の狙いは……そこさ!」


僕とコロコロ上がりが同時にジャンプする。
先に飛んだ者より、後から飛んだ者の方が有利だ。

堅物の手が木の枝に触れる前に、その的へ向かって銃口を構える。
そして、トリガーを引いた。

「!!」


ペシャッと音が鳴り響く。
すれ違うように降りた僕達は、互いに後ろにいる堅物へと振り返る。
そこに見えた的には、オレンジ色のインクが見えていた。


「やるじゃん、コロコロ上がり」

「お前こそ、カメレオン」

「僕は当然だから」

「……いいコンビネーションだった、2人とも」


僕が的を外さないのは当然として……。
これは僕達の勝ちでいいよね、堅物?



***



「『カメレオン』……誰だ、僕にこんなコードネームを付けたのは」

「俺だ」


コードネームの事を呟きながら荷物を纏めていると、横から声が飛んできた。
そこにはイトナが立っていた。


「意味。聞いてもいいか」

「カメレオンみたいに、様々な姿に変装してはその場に馴染む。そんな所だ」

「なるほど。結構僕に合ってそうな理由だね」


まあ知っているわけないか。
僕のコードネーム、レオンの由来がカメレオンから来ている事など。

あ、因みに命名者は僕じゃないよ。
いつの間にかそう呼ばれてたのさ、カメレオンみたいだ、ってね。


「僕を見つけるのに時間掛かったかな?」

「まあそれなりに。でも、まだ力は残っていたから思っていたより掛かっていない」

「そうか。ま、あれだけ動けていたのに納得いったよ」


まだ彼の中には触手を宿していたときの力が残っている。
だが、その力は時間が経つにつれ、なくなっていくだろう。

……その方が正しい。
触手の力は人間の身体に厳しい。
君にはもう必要ないみたいだけどね?


「悪くなかった。しばらくは機動力を生かした暗殺もいいんじゃないか?」

「俺と名前でか?」

「それでも構わないよ。僕の気が乗ればだけれど」

「……分かった。またやろう」





2022/01/11


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