名前の時間



体育の時間



今日の体育の内容は相手の背中にある的にペイント弾を命中させる、というもの。
その狙いは、背後からの狙撃とか、単純に命中率の向上とかもあるだろう。
なんせ、相手は動いているのだから。

そんな中、僕は高みの見物でE組の実力を見ていた。
すると突然携帯から電話がかかってきた。


『やっほー「七色の声」。今何してる?』

「『中二半』か。今はただ見ているだけだな」

『ダメだよ、ちゃんと仕事しなきゃ。評価下がっちゃうよ?』

「仕方ないな、分かった。なら仕事をしよう」

『じゃあ俺も〜』


そう言って電話を切り、木から下りる。
すると丁度目の間には的……『堅物』がいた。


「おや、ラッキーですね」

「七色の声か。いないと思っていたが、単独行動か」

「ええ。本来、私はそういうやり方ですので」


今回の授業ではナイフは使えない。
なので僕の両手にはハンドル銃型のピストルが握られている。

僕が実際で使っているのは実弾の銃だ。
反動とかそういうのを想定して発砲するから、ピストル銃だと感覚狂うんだよね……。


「これだと全力で殺れないのが残念ですッ!」

「!」


発砲と共に堅物は移動し、ペイント弾を躱す。
僕はそれを銃を構え発砲しながら走る。


「ちっ、これだからピストル銃は使いたくないんだ」


走りながら撃つのは正直言うと苦手だ。だってナイフの方が楽だし。
それに実弾銃じゃないから感覚も違うし……余計に命中しない。


「あーめんどくさい! やっぱりこっちだ!」

「いやそれナイフ!!」

「てか投げるなら銃を使えよ!?」


隠し持っていた対触手用のナイフを取りだし、堅物めがけて投げる。


「苦手だから銃で倒すのをやめるのか? 意外と諦めが早いんだな」

「ふっ、私は一言も諦めたなど言っていません!」


いい加減距離を保って走るのも面倒だ。
そろそろこの地形にもなれてきたし……加速するか。


「! まだ速くなるか!」

「元々私はすばしっこい方でして。……こんなものではありません!」


まっすぐ走ればその背中を狙われる。
そんなの向こうだって分かってる。
だから左右のどちらかに躱す。

それをさせないように追い込むのさ。


「……そこだ!」


堅物は僕の声に反応し、後ろへ後退した。
……しかし、今の声は僕が攻撃するという意味じゃない。


「!!」


上から突如放たれた銃弾。
そう、それは中二半の攻撃だ。

僕が言ったのはかけ声ではなく、中二半への指示だったのだ。


「やり〜。ナイスフォロー、七色の声」

「ふんっ。合わせてやったんだよ、中二半」

「……いいコンビネーションだった、2人とも」


木の上から降りてきた中二半が、こちらに手を挙げる。
その意味を汲み取った僕も手を挙げた。

パンッと音が鳴り響くまで、もうすぐ。



***



「『七色の声』……誰だ、僕にこんなコードネームを付けたのは」

「俺だよ♪」


コードネームの事を呟きながら荷物を纏めていると、横から声が飛んできた。
そこにはカルマが嬉しそうな顔でこちらを見ていた。


「意味。聞いてもいいか」

「いろんな声を出せるから」

「何故それで七色の声になるんだ?」


カルマの言葉に首を傾げていると、誰かが僕の机にやってきた。
振り向けばそこにいたのは……


「そのまま7種類、という事にはあまり使われない。多くの種類の声を出せる、という意味で使われる事が多い。そして、基本は声優に使われる事が多いな」

「説明ありがと〜、竹林」


カルマの言う通り、竹林である。
声優、というのは知らないけどつまり沢山の声を出せるという意味のようだ。


「それは褒め言葉なのか?」

「もっちろん! 本当は『俺の彼女』とかにしたかったんだけど、俺が呼ばないと意味ないから止めた」

「相変わらずだな、君は」





2022/01/11


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