堀部糸成の時間

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とある住居にて


「へへへっ♪ 身体も頭脳もそこそこ大人の名探偵、参上〜」

「やってることはフリーランニング使った住居侵入だけどね……」


門と車の間に身を潜めるのは、3年E組の生徒である赤羽カルマ、茅野カエデ、潮田渚、寺坂竜馬、不破優月である。


「んで不破よ、なんで真犯人はこの建物を次に選ぶって分かんだよ?」


彼らがここへ来た理由。
それは昼間教室に持ちこまれた新聞や雑誌に載せられた『黄色い男』の正体を掴むためだ。


「ここは某芸能プロの合宿施設。この2週間、巨乳ばかり集めたアイドルグループが新曲のダンスを練習してるって!」

「はい。犯人の傾向から考えると、ここが狙われる確率99.78%」

「しかも、明日が合宿最終日! 真犯人がこの極上の獲物を見逃すはずがない!」

「なるほど……」


律と不破の調べにより、真犯人はこの合宿施設をターゲットにする確率が高いという。
彼らは2人の発言を信じ、真犯人が現れるのを静かに待つ。

そこで渚とカエデがある存在に気づく。


「あっ……!」

「殺せんせー……!」


茂みから表れた黄色の皮膚に黒い服装を身に纏った超生物こと殺せんせーが現れた。向こうも真犯人を追ってここへやって来たのだろう。
しかし格好はほっかむりを鼻の下だと思われる場所で結んでおり、誰から見ても盗む側のスタイルである。


「見て! 真犯人への怒りのあまり、下着を見ながら興奮している!」

「彼奴が真犯人しか見えねーぞ!?」


……という、殺せんせーを実況していた不破と寺坂のツッコミが繰り広げられていた時だ。


「! ねぇ、あっち」

「……誰か来た」

「黄色い頭の大男……!」


途中途中で身を隠しながら走るその人物……黄色い頭に大柄な男。
黄色い頭は黄色のヘルメットで、その服装はどこか普段殺せんせーが身に付けているものと酷使している。

それは間違いなく、彼らが仮説としてあげていた存在……真犯人である。


男は素早い動きで下着を盗んだと思えば、その場を走り去ろうとしているではないか!
……その時だ。


「捕まえた!!」


男を捕えたのは、彼らとは別の場所で身を隠していた殺せんせーだ。


「よくも私に化けて羨ましい真似してくれましたね!? 丸裸にして隅から隅まで手入れしてやります……!!」

「なんか下着ドロより危ないことしてる人みたい……」

「笑い方も報道通りだしね〜」


殺せんせーの行動を遠目で見ていた生徒ら。
端から見れば危ないことをしているのは殺せんせーに見えるだろう……。


「さあ顔を見せなさい、偽物め!!」


殺せんせーが男が被っていたヘルメットを取った!
黄色のヘルメットに隠されていた素顔は___


「あ、あの人確か___烏間先生の部下の……!」


そこにいたのは烏間の部下……即ち防衛省の人間だったのだ。


「貴方が……なんでこんな___!?」


突如響いた爆音。
それは殺せんせーを囲うように現れたのは、白い布で作られた檻。


「国に掛け合って、烏間先生の部下をお借りしてね……。この対殺せんせーシーツの檻の中まで誘っていただいた。君の生徒が南の島でやった方法だ。若者の発想は柔軟だね。当てるよりまずは囲むべし」

「この声は……!」


そして、何の抵抗もなく平然と真実を語りながら現れたのは……シロだ。


「さぁ殺せんせー、最後のデスマッチを始めようか」


シロが指を鳴らす。
それを合図に現れたのは___


「殺せんせー、お前は俺より……弱い」


触手をうねらせながら殺せんせーの元へ落下していく少年___堀部糸成だった。



『反応あり! 北の方角だ!』

「ちっ、通りで中身が違うわけだ」


シロと同じ格好をした人物が倒れている中心に立つ、黒いマントを身に纏った人物。
周りには暗くて目立たないが、血が飛び散っているように見える。


「常に監視していろ。何か動きがあったらすぐに言え」

『了解』

「……逃がすものか、絶対に……!!」


フードの奥から見える水色の瞳は、月の光を浴びて鋭く光っていた。
その声は焦りと同時に殺意を含んでいるように聞こえた。





2021/09/16


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