竹林の時間
始業式を終えてE組校舎へと戻ってきたE組生徒達だが……
「……ま、こうなるか」
面白いくらいに静まり返っていた。まあ心情は全員同じだろう。
竹林、どうしてA組に行ってしまったのか
……そんな所だろう。
僕に取って竹林はどういう存在だったか。
……僕が知らない単語を良く吐く男って所かな。
男の娘やら七色の声やら、ボクっ娘やらと他にも沢山言われ当初は悪口か何かかと思っていたが、表情から嫌味などの類いには聞こえなかったので褒め言葉として受け取っていた。
それと同時にその言葉を話すときはどこか「現実から逃げたい」と言った感情も見受けられた。まさかそれが今回のA組編入と関係があったりするのだろうか。
***
「ねぇ名前さん。ちょっと聞きたい事があるの」
「なんだいメグ」
放課後
帰り支度をしていると、メグか声を掛けてきた。
「今日の竹林君の件について少し気になった事があるの」
「話してみろ」
「……この学校の制度は知ってるよね?」
「大まかにな」
「E組で良い成績を残した人は本校舎に戻る権利が与えられるの。今回の期末テストで名前さんは浅野君よりもすごい成績を出したけど、何か言われたりしなかった?」
……もしや、理事長殿直々に言われたアレの事だろうか。
先程カルマに話した事をそのままメグに伝えた。
「ああ言われたよ。理事長殿から『A組に来ないか』って。それも2回も」
「2回も!?」
「求められるのは嬉しいけど、しつこいのは嫌いなんだよね〜」
やれやれと思っていると、僕達の会話を聞いていたのか他にも人が集まり始めた。
「じゃあ苗字さんがここにいるって事は、苗字さんはその話を断ったって事だよね?」
「逆になんで受けると思ったのかい?」
「うっ……」
渚の質問にそう返し、周りに集まってきたメンバーを目だけ動かし確認する。
……どうやら此処にいる人達は竹林がA組に行った事を特に気にしているようだ。
「僕は国から依頼されてここへ来た殺し屋だ。A組に編入なんてしたら来た意味ないだろ」
「ということは……苗字がA組編入の話を断ったから竹林に移ったって事か?」
「まあそんな所だろう」
杉野の言葉は僕も思っていたことだった。
何を思って竹林をA組へと誘ったのかは知らないけどな。
「でも、黙って出て行くなんて……せめて何か一言言ってくれたら良かったのに」
「そんなに気になるなら待ち伏せしてみたらどうだ?」
「待ち伏せ?」
「そう。待ち伏せて竹林に問えばいい。『どうしてA組に行ったのか』とでも」
僕の提案にその場にいた生徒達は賛成の意見を出し、早速向かうようだ。
さて、僕は帰って少しでも睡眠時間を確保して……
「勿論名前も行くよね?」
「いや僕はかえ…」
「行くでしょ?言い出しっぺなんだから」
「僕は君達と違っていそがし…」
「じゃあ行こっか♪」
「話を聞け!!」
このまま真っ直ぐ帰ろうとしていたのだが、カルマに引き面れるように竹林を待ち伏せする事に……。
2021/04/24
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