竹林の時間



次の日

二学期開始の合図とも言える式(始業式というらしい)があるので、現在僕は本校舎の体育館へとやってきていた。


「名前ー」

「君は相変わらず暇そうだな」


自販機で飲み物を購入し、ごくごくと飲んでいると後ろから声をかけられた。その人物が誰なのか振り返らずとも分かる…カルマである。

デジャブを感じた?……あぁ、僕も感じた。


「そういえば名前は期末テストトップ成績だったけど、理事長から何か言われたりしなかったの?」

「何か? ……あぁ、そういえば」


カルマの言葉に夏休み中に学校から掛かってきた電話を思い出す。


『本校舎に?』

『はい』


その電話主は理事長殿だった。
内容は『E組からA組への復帰制度について』だ。

今回の期末テストでE組トップ成績を収めた僕には、A組復帰の制度の権利があるらしい。


『理事長殿。私は一度断ったはずですよ?私は暗殺の為にあの教室へ来たと』

『ええ』

『A組に編入してしまえば、私が椚ヶ丘ここへ来た意味がないではありませんか』

『……そうですか』


二度目になる「A組に来い(意訳)」を突っぱねた訳だが……まあ、あの口調だとまた言ってきそうだな。


「名前はA組に行かないよね?」

「行ったら椚ヶ丘ここに来た意味ないだろ」


僕は勉強するために来たわけじゃない。依頼されたからだ。
そのことを伝えると、目の前にいるカルマは安心した様な表情を浮べた。


「あ、そろそろ始まるね」

「そうだな」


僕とカルマはやっと体育館へ入り、それぞれ定位置へと向かった。
暫くして、二学期始業式が始まった。



***



顔も名前も知らない生徒が表彰される所をボーッと眺めていれば、始業式も終盤。やっと終わる……そう思いながら欠伸をした時だ。


「さて!式の終わりに皆さんにお知らせがあります!」


まだあるのか……。夏休みの間はパソコンの画面と向き合ってる時間が多かったから正直眠たくて眠たくて仕方ないんだけど。
もう寝て良いかな……と、どこかで見た事のある生徒の声を聞きながら思っていたとき、瞬時に眠気が覚める言葉が放たれた。


「今日から3年A組に一人仲間が加わります!___竹林孝太郎君です!!」


竹林……?
待て、そういえば朝教室にいなかったような……。


「!」


ステージに現れたのは、紛れもなく竹林で。
……まさか、理事長殿。


「……そう言う事か」


理事長殿が二度も僕をA組へと誘ったのは、今回の期末テストでE組トップの成績だったからだ。しかし僕は、E組を離れる訳にはいかない。
ならば次に勧誘されるのは、僕の次に良い成績を出した生徒だ。

……僕がA組編入を断ったことで、権利が竹林に移ったって所か。


「本当、面白い事を考えるね。理事長殿」


竹林のスピーチが終わると、学秀を筆頭に盛大な拍手の音が体育館中に広がった。





2021/04/24


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