竹林の時間



約束の時間の数分前にイリーナがタクシーで迎えに来た。なんで自分の車ではなくタクシーで来たのかというと、どうやら祭りの屋台というものを出している人から酒を集るそうだ。

ま、イリーナがそうしたいなら別に止めないけど。というより飲酒運転ちゃんと守るのな……。


僕は浴衣なんてものを持っていなかったので私服で夏祭りの会場へ来たのだが……。


「どうして浴衣じゃないんですか!!」

「持ってないからだけど」


目の前にいるのは堂々と人前にいる国家機密ことターゲットだ。
どうやらターゲットは僕の服装が不満らしい。


「浴衣借りれば良かったじゃない」

「急に決まって貸してくれる所なんてあるのか?」


そう言っているイリーナは浴衣姿で僕を迎えに来たのだ。くそ、夏祭りが浴衣を着なければならない催しなのは知らなかった……!!


「ヌルフフフ……ここは私にお任せを!」


ターゲットはそう言ったと思えば、僕の格好が浴衣に替わる。……えぇ!?


「おいターゲット、一体何を……!」

「早着替えです」

「ま、まさか僕の裸を見たって事か!?」

「気にしたら負けよ」

「し、しかし!裸を見られたら僕の性別が……!」

「大丈夫です!裸は見てませんから!!」


そんなことより、自分の格好を見てくださいよ〜
そう言ってターゲットは僕に鏡を渡してきた。


「どうです?どうです!?」

「…………悪くない」

「そうでしょう!?___とても似合ってますよ」


ま、まあ……僕は浴衣なんて人生初だし、センスとかは正直分からない。
だけど……この格好は悪くない。


「ナマエのお団子なんて初めて見たわ〜。やっぱり何でも似合うわね」

「当たり前だろ。僕はどんな服も着こなせるんだから!」

「んじゃあナマエが浴衣に着替えた事だし、酒を集りに行きましょ!」

「イリーナ先生!!苗字さんは未成年ですよ!?」

「分かってるわよ〜!」


イリーナがさっさと連れ出してくれて良かった。でもあのニヤニヤした顔を見るに……


「? 何顔赤くしてんのよ」

「お前がくっついている所為で暑いんだよ」

「アンタずっと冷房の効いた部屋にいた所為で冷たいから丁度いいでしょ?」

「良くない!!」


きっと僕の顔が赤くなっていたのを見ていたと思う。
……しかたないじゃん。似合ってるって言われたら……何よりも貴方に言われたら嬉しんだもの。


「さあ!ビール飲みまくるわよ!!」

「僕はワインが飲みたい……」

「馬鹿ねぇ、こんな所にワインなんてあるわけないでしょ。あ、林檎飴はどう?葡萄じゃないけど」

「イリーナ、お前僕を子供扱いしてないかい?」

「私からしたらガキね」

「ちっ……」


……ま、1日くらい血みどろの世界を忘れるのも良いだろう。
特にイリーナには…ね。





2021/04/05


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