第2節「雄英体育祭:前編」


微裏表現あり



更衣室には誰もいなかった。
先程透ちゃんが誘ってきたように、恐らくみんな暫くは会場で応援をするのだろう。


「はぁ……っ、はぁ……ッ」


ドアに背を預け、ずるずると落ちていく。
よく此処まで耐えられたと思う。……周りの反応からして、恐らく気付かれていない。
自分の演技力に褒めたくなる。

この息の乱れは走ったことによる乱れではない。残り魔力が少なくなってきている、という警報だ。
とりあえず、少し落ち着けば擬態できるまで魔力が回復するはず……!

ずっとその場に座り込んでいる訳にもいかないので、立ち上がって自分のロッカーを開けようと手を伸ばした。


「っ!?」

「随分と珍しい格好をしているではないか、名前」


ロッカーに押さえつけられ、耳元を良く聞いている声が囁く。
……振り向かなくても誰か分かる。


「な、なんで此処に……!」

「様子を見かねて来てやったと言うのに、なんだその態度か」


私のサーヴァントの1人であるギルガメッシュだ。
何故私は後ろからギルに押さえつけられているのだろうか。


「いつ人が来るか分からないんだから……!!」

「何、すぐに終わらせてやる」


近づいてきた綺麗な顔。
そう思った時には既に唇を塞がれていた。


「んんっ、ま……っ、て……ッ!」


余計に人が入ってきたら拙い事になるって!!?
急な事だったから呼吸もできてないし、本当に……息が……っ。


「いつになっても下手だな、名前」

「そっちが勝手にやってるんじゃない……!」

「ほぉ……?まだ無駄口が叩けるか」

「いや、もう無理……んんっ!!?」


どうして魔力供給にキスばかりやってくるの、うちのサーヴァント達は!!!
別にキスじゃなくてもいいって知ってるでしょーっ!?

そう思っていると、太股に何かが触れている感覚がした。
チラッと視線を下に向けると、そこにはギルの手が。その手はゆっくりと上へと上がっていくではないか!


「ね……、ちょっと……んむっ!」


抗議しようと口を開いたのに、ギルは言わせないとでも言うように舌を入れてきた。
……まさか、こんな所で……!?

更衣室という閉鎖的空間で、しかも他の人が来るかも知れない状況に心臓がドクドクと音を立て始めた瞬間、ギルは漸く私を解放した。


「さて、少しは足しになっただろう」

「そ、それはとても感謝してるよ……」


とっても感謝してるけど、そろそろ身を隠して欲しいかな!?
人が来るかも知れない恐怖を早く取り払いたいし、何より早く着替えたいし!!


「最終種目とやらでどんな戦いを見せてくれるのか……。楽しみにしているぞ、名前?」

「……うん」


ギルはそれだけ言うと霊体化してその場から消えた。
……流石にいつまでもこの格好でいたら、帰ってきたみんなに怪しまれる……!!

でも、先程魔力供給をして貰ったお陰で息の乱れは収まった。
感覚を研ぎ澄ませば、魔力を感じる。……今、私の身体に満ちている魔力はギルのものだ。

その魔力を貰った状況を思い出してしまい、早く着替えてしまおうと服に手を掛けた。





2021/07/10


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