第2節「雄英体育祭:前編」


side.心操



可笑しい

そいつの様子を見てすぐに頭にその言葉が浮かんだ。
俺の個性は『洗脳』
その名の通り、相手を洗脳状態にする事ができる個性だ。

最初はあの爆豪って奴と一緒にいたから何となく声を掛けてみて、個性を発動させた。そんな気持ちだった。


「……指示をどうぞ」


こんな状態、初めて見た。
本当に俺の個性の力でこの状態になっていると言うのだろうか。

話しかけた時と全く違う声音。
感情が読み取れない”無”を移している瞳。
他に2人洗脳状態にしているが、明らかにこの女だけは様子が変だ。
例えるなら……そう。操り人形のような、与えられた指示を躊躇する事無く受け入れ、実行する機械のような感じ。

戸惑いはあったが、同時に”使える”と頭が判断した。
憧れのヒーローになるためには周りを蹴落としてでもなると決めたんだ。
利用できるものは利用してやる。


「それじゃあいよいよ始めるわよ!!」


まずは様子見だ。
その間にも狙われる可能性はある。
……指示を待っているくらいだ。その言葉を言うくらいなら見せて貰おうか、あんたの力。


「”動きを止めろ”」


向かってくる騎馬に対して止めるように命令をする。
前騎馬にいるこの女が俺の指示をどのように受け取り、実行するのか。
そう思いながらどうなるのか見ていると。


「!!へぇ……」


向かって来た騎馬が動けなくなった。
何がそれを働きかけていたのか。それは足下に答えがあった。“鎖”だ。
黄金の鎖が足下から伸びて騎馬の足を止め、動きを完全停止させていた。
折角だ、貰っていこう。


「”牽制しろ”」


次にその指示を出すと、今度は炎が発生した。
鎖を出した次は炎か。……この女、どんな個性を持っているんだ?

そんな事よりも、思っていた以上に操りやすい。
序盤はなるべく身を潜めたい。この女の個性は強力でかつ目立つ。
だが、防御面は間違いなく高い。……後半からが勝負だ。



***



「3位!鉄哲……あれェ、おい!!?心操チーム!?いつの間に逆転してたんだよ!?」


上位の奴らが目立ってたお陰で動きやすかった。
この女の個性もあって3位にのめり込めた。
終わったのなら掛けておく意味は無い。洗脳状態を解除する。


「ご苦労様」


それだけ言ってその場を離れようとした。


「待って」


先程とは違い、はっきりした女の声が聞こえ腕を掴まれた。
振り返れば、そこには先程まで洗脳させていたあの女がいた。
しっかりと自我を持った状態でこちらを睨んでいた。





2021/07/10


prev next

戻る














×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -