第2節「雄英体育祭:前編」
side.緑谷
一緒に組んで欲しい人は、麗日さんと飯田君……そして名前ちゃん。
飯田君の機動力と麗日さんの個性で軽くする。
そして、名前ちゃんの個性は状況に応じて様々な対応ができる。
これは僕だけが知っている事。
名前ちゃんが擬態できるパターンは11種。本人が言っていたから間違いない。
実際に見たことのあるものは、体力テストの時に見せたあの機動力をもつ赤髪の姿と、敵の襲撃時に見せた金髪赤目の姿。
で、先程の障害物競走で見せた機動力が高く、かつ身軽な動きが特徴的だった白髪の姿。
どの姿も髪の色に瞳の色が違うから別々の英霊……名前ちゃんがいうにはサーヴァントと呼ばれる人に擬態しているはずだ。
幼い頃からの付き合いだから、意思疎通はしやすい。かっちゃんとは難しいけど……。
詳しいことは本人から説明を受ける必要があるけれど、彼女の事だ。きっと騎馬戦に合うものを既に見つけているはずだ。
「おーいっ、名前ちゃーん!!」
麗日さんが幼馴染みの名を呼ぶ。
背を向けている名前ちゃん。……もしかして、聞こえてない?
まあこんな広い会場だし、意外と聞き取りづらいのかも知れない。もう少し近づこう。
「名前ちゃん、良かったら一緒に騎馬組ま……」
「悪いな。此奴とは俺が組んでる」
自分より少し背が低い肩へ手を伸ばそうとした時。
横から現れたのは、いつしか見た顔。……確か、2週間前に教室前の廊下に集まった他のクラスの生徒の中にいた普通科の人だ。
かっちゃんに対してあんな言ってたから驚いたのを覚えてる。
「そ、そっか……」
既に誰かと組んでいるのなら仕方ない。
そう思って引こうとした。
……いや、名前ちゃんが簡単に了承するだろうか。それも、他クラスの人と。
誰とでも気軽に話せる彼女からは想像付かないが、実は名前ちゃんは接点のない人に対して全く興味がない。
ヒーロー科志望なら相手の分析をする際にまず始めに意識がいく“個性”についても、入学して少し経ってからクラスメートの個性を把握し出したくらいだ。
そこは人それぞれだし、なんとも思わないけど……。
長い付き合いだからこそ、疑問に思った。
「お、お互い頑張ろうね!!」
互いに了承して組んだんだ。引き抜きなんて行為はできない。
そう思って次に飯田君の元へ行こうと麗日さんとその場から離れた。
「……」
生気のない瞳がこちらを見ていた事を知らずに。
2021/07/04
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