第9節「敵連合」


side.天草四郎時貞



「貴方は……?」


この声は確か、マスターの幼馴染である者の声だ。
確か名前は……緑谷出久さん。


「私はマスター……名前さんに仕えるもの。初めまして」

「名前ちゃんに、仕える……?」

「今は時間が惜しい。まずは抱えている彼を早く安全な場所へ。敵の攻撃は私に任せてください」


余程マスターと私の関係が気になるらしい。
私をここへ……人目のある場所へ呼び出したと言う事は、我々の存在が向こうに知られてしまった、という事でしょう。


「……ふむ」


先程、平和の象徴の彼……確か、名はオールマイト。
オールマイトさんが自身より大きな敵をバックドロップしていたが、見たところ攻撃が効いていないようだ。


「……蛙吹さん」

「なあに緑谷ちゃん」

「相澤先生担ぐの代わって」

「ケロ?うん。……けど、なんで?」


緑谷さんの方へ視線を向ける。
……確かマスターが言っていた。彼はオールマイトさんに憧れていると。

そして、これはマスターには話していない事。……緑谷さんはをオールマイトさんからある力・・・を授かっている。
本人も言っていましたが、どうやらその力については世間に公表していないようだ。なのでまだマスターには伝えていませんが……。


「考えるよりも先に足が動く。……それが、この世にいるヒーローの素質の一つ、だと。……なるほど」

「止めなくて良いのかよ!?」


紫色の可笑しな髪型をした少年が私を見上げて、緑谷さんが走っていた場所を指さす。


「それが正しいと思ったから、彼は飛び出していったのではありませんか?……自分の行動には責任を持つものですよ」

「だけどよぉ……!」


まあ何かあれば手を出してあげましょうか。
……マスターが大切にしている人間のようですし。

飛び出していった緑谷さんはオールマイトの方へと手を伸ばすが、その間に割って入ってきたのはあの黒い靄のヴィラン


「……!」


黒鍵を構えた時、視界に動く何かが入った。
確か、マスターにとってもう一人の幼馴染み。名前は爆豪勝己さん。
……距離を考えても向こうの方が早い。手出しはしないで、早くマスターを安全な場所へ移しましょう。


「しかしまあ、私達の存在を知ってながらよく行動に移したものですね。……私達がいる限り、マスターを攫う事などできやしないのに」


さて、このことについては他のサーヴァントにも報告しなければ。
何よりも我々の存在が敵に知られたことは伝えなくてはなりませんから。


「おーいっ!おーいっ!!」


上から声が聞こえ、顔を上げる。


「お茶子ちゃん?」

「おーいっ、手伝ってくれー!重いーっ!!」


どうやらクラスメイトのようだ。
二人の呼びかけに子供達が降りてくる。


「名前ちゃんっ!!あれ、この人は……?」

「今はここから離れることが優先です。彼を移動させなければ」

「は、はいっ」


この男性は、子供達の言葉にもあったように教師なのでしょう。
そして、風魔小太郎かれが言っていた個性を消す個性の持ち主で間違いないでしょう。


「名前ちゃんは……、大丈夫なんですか……?」

「ご心配なく。魔りょ……キャパを超えて眠っているだけです」

「そ、それなら良かった〜…っ」


この方はマスターの友人なのでしょうか。
マスターともあまり身長も変わらなさそうだ。

長い階段を登り終え、上で待機していた子供と倒れている教師らしき人物と合流し、外へ出ようとした時。


「なんだッ!!?」

「爆発!?」


後ろから聞こえた音に子供達は足を止める。
何かが飛んでいったみたいだ。……恐らく、先程の大型の敵。


「なるほど。……あれが、平和の象徴と呼ばれる男の強さですか」


子供達の歓声を聞きながら、天井の穴を見つめた。
……マスター、もしかしたら貴女が思っているよりプロヒーローというものの世界は厳しそうですよ?





2021/07/04


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