第9節「敵連合」
「う……っ」
痛みを感じながら、目を開ける。
「!無事か、苗字」
「あ、相澤先生……?」
視界に入ったのは誰かの足下。
上から聞こえてきた声は相澤先生のものだった。
よく見たら相澤先生に抱えられている。……てか、これどういう状況!?
「黒い靄が現れたと思えばお前が振ってきたんだ」
「降ってきた……?」
「ワープさせられたんだよ、あの場所から」
もしかして、気絶した私を相澤先生が助けてくれた……?申し訳ない事をした。
そう思っていると、相澤先生が一度後ろを向く。
私もそれにつられてその方向へ視線を向ける。
「もしかして、あの敵の個性はワープ……!?」
「そうじゃなきゃ、侵入されてないよ」
相澤先生は「起きたんなら立て」と言って私を地面に下ろす。
自力で立ち上がって正面を、状況を分析する。
「他はどうなった」
「恐らくみんなバラバラにワープさせられたかと……!」
「チッ。苗字、力貸せ」
「はいっ!!」
相澤先生と背中を合わせ、私は右腕に意識を込める。
何もなかった右腕に赤いもの___令呪が浮き上がる。
「もう一度力を貸して……!擬態、”ギルガメッシュ”!」
私の意思に応えるように令呪が赤い光を放つ。
『良かろう。使いこなして見せよ』
擬態していたサーヴァント……ギルガメッシュの声が聞こえた瞬間、彼の魔力が流れ込んでくる。
視界に入った自分の髪が彼の色になっていることを確認する。
「先生、殺しちゃダメなんですよね?」
「……当たり前だ」
その会話を最後に互いに敵陣へ突っ込んでいく。
私はバビロンからなるべく人を殺さないであろう武器を取り出す。
天の鎖を射出して相手を拘束し、相手を武器で殴りつけて気絶させる。
「ッ!!先生ッ!!」
「!助かった!!」
残念ながら戦闘経験の少ない私は相澤先生の足を引っ張るだけだ。
だから邪魔にならないように、相手を拘束して攻撃を防いだりしてサポートに徹する事にした。
「ガキの方を狙え!!」
誰かが私を狙えと叫ぶ。
「ねぇアーチャー。人を殺さないでダメージを与えられないかな」
『身体の一部に当てれば、痛みで動けんだろうよ』
「……わかった!」
背後にバビロンを展開させる。
狙うは相手の腕や足、身体の一部!!
そう頭で浮べた瞬間、私の横を速い何か……射出された武器が通り過ぎた。
「やった……!!」
敵の悲鳴が聞こえる。
……自分が思い描いた場所へ当たったのだ。
思い通りに射出できたことに喜んでいると遠くから呻き声が。
「!?先生ッ!!」
先生が敵の攻撃を受けてしまっていた。
確か、先生の個性は“個性を消す”個性。
この人数だからかなり無茶してたんだ……!!
その敵に向かって武器を射出しようと構えたが、
「ッ、もうッ!!」
私の元へ一気に敵が流れてきたのだ。
天の鎖で拘束するには多すぎる……!!
『見るに堪えん。我に変われ、名前』
「え?」
『殺さねば何をやっても良いのだろう?』
ギルには考えがあるようだ。
今の状況、ゆっくり敵を相手にしている訳にはいかない。
相澤先生のフォローにいかないと行けないんだ……!
「分かった、お願いアーチャー。擬態、”精神憑依”!」
そう口にした瞬間、自分の身体の支配権利がギルに移った。
考えている時間さえ惜しい。ギル、頼んだよ!
「フンッ、考えも無しに突っ込んでくるとは……。滑稽よな」
私の声でギルがそう口にする。
「見ておけ名前。我の財宝はこのようにして使うのだ」
その言葉が紡がれた瞬間、魔力の流れが変化した。
……まさか!!
『っギル!』
「我の物だ。どう使おうと我の勝手でだろう?」
『そ、そうだけど……!!』
今は使って欲しくなかったー!!!
……という言葉が届く訳もなく。そもそも届いてても聞いてくれる方が少ない。
そう。ギルは彼の代名詞とも言える宝具”王の財宝”を大量に展開したのだ。
絶対そんなに開けなくても、目の前にいる敵に勝てるよ!?
届かない心の叫びをしている間に、いつの間にか精神憑依が解除されていた。
「……!」
聞こえた音に反応して、後ろを振り返る。
そこに移った光景は
「先生……ッ、腕が……!!」
相澤先生の肘が崩れていた。
私が多くの敵を相手にしている間にやられただ……!!
「っ、切りが無いッ!!」
どれだけの敵がここにいるんだ!?
相澤先生のフォローに行きたいのに、敵が邪魔をして思うように動けない……!!
2021/07/04
prev next
戻る