第9節「敵連合」



「皆さん、待ってましたよ!」


到着し、バスを降りたら前に誰かがいた。


「スペースヒーロー『13号』だ……!災害救助で目覚ましい活躍をしている、紳士的なヒーロー……!」


ありがとう、いーちゃん。説明してくれて。
13号先生に挨拶をし、建物の中に入る。


「外見からして何となく思ってたけど……。広いなぁ」

「なあ!すっげー……、USJかよ!」


私の独り言に切島君が反応する。
互いに顔を見合わせ、共感するようにうなずき合う。


「水難事故、土砂災害、火災、暴風、エトセトラ。あらゆう事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も、ウソの災害や事故ルーム!略して“USJ”!!」


本当にUSJだった。
何となくだけど、クラスメートと気持ちがシンクロした気がする。

13号先生に相澤先生が近づき、何かを話しているようだ。
あれ、そういえば今日はオールマイト先生もいるはずだよね?どうしたんだろ。


「えー、始める前にお小言を1つ、2つ……。3つ4つ……5つ6つ7つ……」


増えてる増えてる……。
またクラスメートと気持ちがシンクロした気がする。


「皆さんご存知とは思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んで、塵にしてしまいます」

「その個性でどんな災害でも人を救いあげるんですよね!」


ごめんなさい13号先生、私知らなかった。
いーちゃんの隣にいる麗日さんがめっちゃ首を振ってる。さっき好きなの〜!って言ってたからファンなのかも。


「ええ。しかし、簡単に人を殺せる力です。皆さんの中にもそういう個性がいるでしょう」


13号先生が言った事に、私は間違いなく当てはまる。
英霊の力は強大だ。人を殺す事など簡単である。


「1歩間違えれば容易に人を殺せる、行き過ぎた個性を個々が持っている事を忘れないでください」


「ご清聴、ありがとうございました」と言った13号先生に拍手を送る。

私の個性は完全な戦闘向き個性。だけど、扱う私が戦闘経験がないばっかりに持て余したものになってしまっている。
だから、今日の授業ではこの個性を救助に生かせるかを見つけるんだ。

早速授業が始まる。そう思った時……


「よーし。んじゃあまずは___」


相澤先生が指示を出した瞬間。いや、出そうとした瞬間。


「……?」


訓練場の電気が消え、薄暗くなった。


「一塊になって動くな!!」


相澤先生の鋭い声が響く。
その時、隣にいた切島君の声が聞こえた。


「なんだありゃ……」


切島君の見ていた視線の先を見る。
そこには黒い霧のようなものから現れる人達がいた。


「また入試ん時みたいに、もう始まってんぞパターン?」

「動くな!!………あれはヴィランだ……!!」


相澤先生が捕縛武器で隠れていたゴーグルを付けた。
じゃああれは、本当にヴィラン……!!?
そう思うと恐怖が身体を襲った。


「ヒーローの学校に入り込んでくるなんて、アホすぎるぞ……!」

「先生っ、侵入者用センサーは?!」

「勿論ありますが……」


13号先生の回答から判断できるのは……あのヴィランはそのセンサーが効いていない……?


「現れたのは此処だけか、学校全体か……。何にせよセンサーが反応しねェなら、向こうにそういう事ができる奴がいるって事だ」


轟君が言うには、この“奇襲”は何かの目的があって念入りに計画されたものではないか、と言った。
一体あのヴィラン達は何の目的で……?


「13号、避難開始。学校に電話試せ。センサーの対策も頭にあるヴィランだ、電波系の奴が妨害している可能性がある。上鳴、お前も個性で連絡試せ」

「ッス!!」

「先生は!?1人で戦うんですか!?いくら個性を消すと言っても、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは、敵の個性を消してからの捕縛だ……。正面戦闘は……」


そう口を濁らせたいーちゃんに相澤先生はこう答えた。


「一芸だけじゃヒーローは務まらん」


……と。
相澤先生は13号先生に任せた、と声を掛けてヴィランの中へ突っ込んで行った。


「皆さん、急いで出口へ!!!」


13号先生の指示で私達は演習場の出口へ走る。しかしその前に誰かが現れた。


「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟“雄英高校”に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事で」


何を言っているの、このヴィランは……?
息絶える?それって、オールマイト先生を殺しに来たって事じゃん……!!


「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるはず……。ですが、何か変更があったのでしょうか。……まぁ、それとは関係なく私の役目はこれ……」


まるで翼を広げた蝙蝠の様に、ヴィランが黒い霧の面積を広げた。

何か仕掛けてくる……!
そう思った時、私達の前を誰かが飛び出していった。

なんと、ヴィランに向かってかっちゃんと切島君が飛び出したのだ。
発生した黒い煙。かっちゃんの個性だろう。


「その前に俺達にやられるって考えなかったか!!」


煙の中、切島君の声が聞こえる。
流れてきた風圧に目を瞑り、次第に煙が晴れてきた。


「危ない危ない……。生徒ともいえど、優秀な金の卵……」

「ダメだ!!どきなさい、2人共!!」


私の隣にいる13号先生の指が開いている。個性を使おうとしてたんだ!
それを見て私は、右腕に令呪を浮き上がらせた。


「擬態、”ギルガメッシュアーチャー”」


小さく個性発動の意思を示す。


『何、我を使うとな。いいだろう』


ギルの声が聞こえたと思えば、視界に入る髪が金色になっている事に気付く。擬態成功だ!
擬態主に声を掛ける暇も無く、私は鎖……エルキドゥを射出し、かっちゃんと切島君に巻き付けこちらへ引きつけようとした。


「私の役目は、貴方達を散らして!嬲り殺す!!」


ヴィランがそう言った瞬間、私達の周りにはあの黒い霧が。


「みんなー!!!」


飯田君の声が微かに聞こえる。
もしかしたらこの霧の中から脱したのかもしれない!!
霧で視界がはっきりしないが、人がいた位置は大体覚えている……!
その位置を頭に浮べ、砲門を展開する。……いや、しようとした。


「かはッ!!?」


うなじ辺りに強い痛みが走る。
それと同時に擬態が強制的に解除されてしまった。



「___見つけましたよ。英霊を束ねる姫、苗字名前……!!」



どうしてその言葉を……『英霊』という存在をヴィランが知ってるの……?
それを口にする前に私の意識は暗闇の中へと落ちた。





2021/07/03


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