第8節「忍び寄る魔の手」
次の日
「おはよっ、かっちゃん!」
「……何でいるんだよ」
「待ち伏せ」
私のどや顔に恐らくかっちゃんは引いている。
今日は一緒に登校すべく、早めに起きて待ち伏せしたのだ。因みにかっちゃんの家の近くで小太郎(霊体化状態)を張らせて置いたので家を出てないことは確認済みである。
私の横を通り過ぎたかっちゃんの手を掴む。
「一緒に学校、行こ?」
「チッ」
私の手を振りほどくかっちゃん。
流石に嫌だったか……と思ったのだがかっちゃんが私の手を取った。
「こっちの方がいい」
「!……そっか」
こっちを見ないかっちゃんの横顔を見て、本当に立ち直っているのだと感じた。
***
「なにあれ」
「チッ、めんどくせェ」
校門の前には沢山の人集りが。
……よく見たら、カメラとかマイク持ってない?
「すみませーん!オールマイトについて……あれ?君ヘドロの時の……」
「やめろ!!」
マイクを持った女性がこちらに近づき、かっちゃんを見てそう言った。
まだそのこと覚えてるのか。
流石にこの状況は彼に良くない。
『仕方ないなぁ。お兄さんが助けてあげよう』
その声が近くで聞こえた瞬間、
「わっ!?」
「ぅおっ!?」
校内へ入ってきていた。
校門前……雄英バリアを超えられない取材陣から「消えた!?」やら「なんだこの花びらは!?」と聞こえる。
……ああ、あの人が助けてくれたのか。
「ありがとう、キャスター」
『いいえ』
こっそりお礼を言うと、脳内にマーリンの声が聞こえた。
かっちゃんは私がコソコソ会話しているのに気付いていなかったみたいだけど。
「何はともあれ、教室行こっか!」
私がそう声を掛けると、かっちゃんは一度こちらをガン見して先に入って言ってしまった。
……何か顔に付いてたかな。
不思議に思いながらかっちゃんの背中を追った。
「……見つけた」
この時の私は知らなかった。
私にむけて魔の手が伸びていた事に。
2021/07/02
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