第7節「二人のリスタート」



「爆!豪!少年んん!!」


私の横を何かが通り過ぎた。……しかし誰かはすぐに分かる、オールマイト先生だ。
かっちゃんの肩を掴んでなにかを言っている様だがこの位置からは分からない。


「名前ちゃん」


たった数日なのに、久しぶりにその声で呼んで貰えた気がする。
振り返ればこちらに近づいてくるいーちゃんが視界に入った。


「ごめんね。……ずっと気にしてたんでしょ?」

「!!」


どうやら私の態度はいーちゃんにバレバレだったみたいで。
表情に出やすいの直さないとなぁ……。


「さっきも言ったけど、まだまだ2人には適わないし勝てない。今日みたいに怪我すると思う。……だけどっ」

いーちゃんの真っ直ぐな瞳が私を見つめる。


「もう、君に守られる僕じゃない……!」


その言葉に目が見開いていく感覚がした。
……もうあの時のいーちゃんはいないのか、と思うと寂しくなった。


「……そっ、か」


自分の口から出た声が思ったより小さかった。
そう思っていると手を掴まれ、驚いて顔を上げる。


「___今度は、僕は君を守る番だ……!!」

「……!」


こりゃあ、一つ取られた。
いつものいーちゃんなら絶対取らない行動……私の手をいーちゃんから手を取るなんてことしないもの。


「ひぇっ」

「自分から握って置いて、その反応はないんじゃない?」


握り返したら顔を真っ赤にして声をあげるいーちゃん。
一瞬かっこいいって感じてしまったが、彼には可愛いが似合うと思う。


「ありがとう、いーちゃん。でも、私だってヒーロー志望なんだから……まだ、いーちゃんの事守らせてよ」


私がそういうといーちゃんの顔からボフンッと音がなった。


「えっ!?いーちゃん!!?」

「緑谷少年!?」


顔を真っ赤にして気絶したいーちゃんを、オールマイト先生が保健室に連れ戻していくのを見送る。


『奏者も中々やるではないか』

「本心を言っただけなんだけどなぁ」

『余は奏者のそういう所が大好きだぞ!』

「ふふっ、ありがとうセイバー。私もセイバーの事、大好きだよ」

『〜っ!!余は愛しているぞ!!!』

「ちょっ、セイバー!!ここ外!!なんなら生徒玄関前!?」


生徒玄関前だったから、もし仮に窓からこちらを見ている人がいたとしても見えてない……はず。
誰かに見られていたら、完全に心霊現象である。だって急にその場でふらついたんだから。
運動神経が悪いのは自覚してるけど、何もないところでふらつくようなドジではないと思う!!



第7節「二人のリスタート」 END





2021/07/02


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