第4節「敵」
side.緑谷
分かってたんだ、自分がヒーローにはなれない事を
分かってたのに、憧れの人から言われたのは心に響いた
いつもの癖で来てしまった現場。
人だかりの中見えたのはあのヘドロ敵と……
「……!!!」
僕の幼馴染みである二人
……かっちゃんと、名前ちゃん
ヘドロ敵に捕まっていたかっちゃんの目を見て目が見開いていった。
そして、気付いた時には身体が敵の方へと動いていた。
「バカやろぉーッ!!止まれっ、止まれーッ!!」
後ろからヒーローの声がする。
分かっているのに止まれなかった。
なんで出た?何してんだ?____なんで?!
「爆死だああああッ!!」
どうしよう、どうしよう……!こういうときは……!!
脳裏に浮かんだのは、自分がずっと書き続けてきたノートのあるページ。___25ページ!!
「っしぇいッ!!!」
背負っていたリュックを思いっきり敵に投げつける。
中に入っていた勉強道具が飛び散り____敵の目に当たった!
かっちゃんの咳き込む声。____無事だ!!
でも名前ちゃんの声が聞こえない。意識がない……!
「かっちゃんッ、名前ちゃんッ!!!」
かっちゃんを助けようと掴めないヘドロを掴み続ける。
「なんで、テメェが……ッ!」
「足が勝手に……っ!何でって、分からないけど……!!」
霞む視界の中、かっちゃんを視界に移す。
「____君が……ッ、助けを求める顔をしてた……ッ!!」
無意識に、自然にその言葉が出てきていた。
そして、視界にもう一人映った。……僕のもう一人の幼馴染みである彼女、名前ちゃんが。
澄んだ茶色の大きな瞳を閉じ、完全に意識のない彼女を見て心臓が更に脈打った。
「もう少しなんだから……、邪魔するなああああッ!!」
敵の手がこちらに向かってくる。分かっているのに恐怖で身体が動かない。
自分に向かって振り下ろされる腕に目を瞑った。
___刹那、爆発音が響いた。
「本当に情けない……」
その声が聞こえ、顔を上げる。
「オール、マイト……」
「君に諭しておいて……っ、己が実践しないなんてェッ!!」
そこには敵の手を受け止めているオールマイトが目の前にいた。
「プロはいつだって、命懸けえええぇッ!!!」
「オールマイトオオォッ!!!」
オールマイトが吐血しながら叫ぶ。
敵の腕がオールマイトに向かって振り下ろされ___
「DETORIT SMASHッ!!!」
その必殺技が耳に聞こえた瞬間、強力な風圧が発生した。
……それだけは覚えていた。
2021/04/29
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