第4節「敵」


side.緑谷



僕が気絶している間にヴィランはヒーローや警察に回収されたらしい。
で、僕はというと……



「全く、無茶にも程がある!!君が危険を冒す必要は全然なかったんだ!!」



ヒーロー達にものすごく怒られていた。しかし……



「すごいタフネスだ!それにその個性!プロになったら是非うちの事務所に…」



すぐ近くにいるかっちゃんは僕と真逆で賞賛されていた。
そして、かっちゃんと一緒にヴィランに捕まっていた名前ちゃんはと言うと……



「……気絶してるみたいだな」



未だに意識が戻っていなかった。
どうやら僕が此処へ来る前にやって来てかっちゃんを助けようとしていたようだ。しかし、隙をとられてヴィランに取り込まれてしまったらしい。



「もう少しで救急車がくるはずだ。……それにしても、彼女のあの個性は凄かったなぁ」

「ああ、プロになったら是非うちに来て欲しいよ」



聞こえてくる会話から判断すると、名前ちゃんもかっちゃんを助けようとしたようだ。
だが、彼女には付き添いの人がいたはずだ。

長年彼女とは一緒にいるけど、僕には分からない事がある。
幼い頃にあった白みがかった髪の男性と、今日会った緑色の髪の……男性?女性?
小さい頃の彼女はその男性のことを“個性”だと言っていた。

今日の濃い出来事で忘れていたが、あの緑色の髪の人は誰?名前ちゃんとはどんな関係なの?
ヒーロー達の長い説経の中そう思っていると……



「こら君!勝手に入ってきちゃ困るよ!!」



注意の声が聞こえ、僕はその方向へ視線を向ける。



「あの人は……!」



真っ白な衣を纏った人物。
緑色の長い髪を揺らし、一点だけを見つめてこちらへ歩いてくる。
そう、彼女の近くにいたあの人物だ。

……待てよ、この商店街の出入り口は警察や見ていた一般人で入ってくるのは難しいはずだ。
あの人はどうやってあの人混みを抜けて入ってきたの?


そんな事を考えていると、裸足で歩いたような足音が段々と近付いてくる。
……って、よく見たらあの人靴を履いていない。本当に裸足だ。



「……僕なら最初からここにいたけど?」



その声は、先程僕のノートを取ってくれた声とは全然違った。
綺麗な声な事に変わりなかったけど、警戒しているような何というか……その表情はヒーローを敵視しているように見えた。



見えていた・・・・・けど……君達、本当にヒーローなのかい?」

「当たり前だ!正真正銘、プロヒーロー___」

「僕の知っているヒーローは、こんなものではないけど」



そう言ったその人物は、本当に不思議そうな顔をしていた。



「僕は、賞賛されるべき人物はもう一人いると思うけどね」



緑色の髪の人物はオールマイトを見て___僕を見た。
そして綺麗な笑みを見せてくれた。

その笑みに少しだけ顔が赤くなる。……まさか、僕の事を言ってる?



「おーるまいと、だっけ。ありがとう、彼女を助けてくれて」

「えーっと、君は確かさっきの……」

「覚えてたんだ。そう、さっきも助けて貰ったよ」



……なんだか、ちょっと掴みにくい人だな。
緑色の髪の人物はオールマイトの元へ近づいき話しかけていた。……取材陣がいる前で。
「はーっはっはっは!!」とオールマイトは笑っているが、若干無理しているような気がする。



「悔しいね。……二度も助けられたなんて」



緑色の髪の人物はその言葉をオールマイトに言って、再びこちらへ戻ってきた。
そして、僕の近くで横たえている名前ちゃんの元へ近づいた。



「さて……、彼女を返して貰おうか」



そう言ってはいるが、緑色の髪の人物の行動と言葉は逆で、既に名前ちゃんの身体を抱えていた。


「待ちなさい!彼女は今すぐ病院に…」

「必要ないよ。……今の彼女は、病院という場所に連れて行っても意味が無い・・・・・


緑色の髪の人物はそう言って名前ちゃんを抱えたまま浮いた。
翼を生えていればまだ分かった。だけど、緑色の髪の人物名前ちゃんを抱えたまま中に浮いている。
どうして浮くことが出来るんだ?その原理が分からない。



「さて、この目撃者の数は良くないな……。アサシン彼女に頼むか」



小さかったが、緑色の髪の人物はそう言っていた気がする。
プロヒーロー達の声を聞かずにその人物は飛び去ってしまった。





2021/04/29


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