第2節「ヒーローと個性」
「あら、どうしたの名前?ご飯はもう少しかかるわよ?」
私がキッチンに入ってきたのを見て、お母さんは作業を中断させる。
「あ、あのねお母さん……。お願い、があるの……」
「お願い?」
「う、うん。……個性の事でお願いがあるの」
「言ってみて?」
首を傾げて私を見つめるお母さん。
「え、えっとね。私の個性の原動力が魔力っていうものなのは言ったよね?」
「ええ。それがどうかしたの?」
「今の私じゃサーヴァントを現界させ続けるのが難しくて……、それで……」
「それで?」
この先を言って良いのだろうか。迷惑ではないだろうか。
「……大丈夫だから、そんな困った顔をしないで。お母さんにそのお願いを教えて?」
下げていた視線をあげると、優しそうな目線と視線が絡む。
「で、電気を分けて欲しくて……」
「電気?」
「う、うん。電力を魔力に変換して、みんなに供給できるようにしたいの……」
「わかったわ」
「え?」
まだ最後まで言ってないのに……。
「電気代かかっちゃうんだよ!?……良いの?」
「良いのよ電気代くらい♪それに、子供は素直に甘えるものよ」
お母さんは自分の顔の横に人差し指をビシッとあげた。
「アーサーさんから貴女について少し聞いたわ。……前世での生まれ方が特殊だったって」
お母さん、アーサーから私の出世を聞いたんだ。別に隠す気もなかったけど。
「そのお陰で“親”という存在の認識が周りと違うって聞いたわ」
「……うん」
「確かに、世の中にはいろんな人間がいる。人それぞれ、という言葉があるようにいろんな人がいるからこれが親というものとは言えないけれど」
頭に何かが乗る。……お母さんの手だ。
「私は貴女にわがままを言って欲しいな。折角貴女の親になれたんだから、貴女の力になりたいの」
「さーて、電気代の事だったわね〜」と言いながら、お母さんはどこかへ言ってしまった。
お母さんと入れ違いになるようにマーリンはキッチンにやってくる。
「私の言ったとおりだっただろ?」
こちらに向かってウィンクするマーリン。
別にマーリンの言ってた事を疑っていた訳ではないけど、まさかこんなにもあっさり事が進んでしまうとは思わなかった。
「君が両親を疑っていたら、他のサーヴァントも様子見のままなんじゃないかな」
「……そうだね」
マーリンはどちらかというと両親を受け入れている方だった。あとはネロとかアーサー、カルナも。他の子達は完全に様子見といった反応だった。
確かに、マスターである私が完全に信頼しきれていない人物をサーヴァントがそう簡単に受け入れる訳がない。
……少しずつ慣れていこう。この世界にも、両親にも。
第2節「ヒーローと個性」 END
2021/03/17
prev next
戻る