第2節「ヒーローと個性」



マーリンの指導によりくたくたになった現在夕方。
今日はお父さんは事務所という場所に泊まるらしい。というより、普段は事務所にいるらしく家にはあまり帰ってこないそうだ。

今日は自分の個性について沢山知る事ができた。
自分に発現した個性は、自分が契約したサーヴァントを憑依し、そのサーヴァントの力を使うことができるというもの。
他の人の個性がどんなものなのか、まだお父さんとお母さんの個性しか知らないため比べようがないが、間違いなく言える事はある。

英霊という存在は強力な存在だ。
その力をほとんど使えるようになるこの個性は、使い方を間違えてはいけない。それだけは理解出来た。

強さというものは高ければ高いほど負担もあると私は思う。



「う、うぅ……」



マーリンの指導でくたくたになっている今なら、より実感できてる気がする。
魔力もほとんど残ってないから動くという動作をする気力もない。

今は擬態状態を解除して普段の姿に戻っている。
憑依していたギルはどこなのか、というとどうやら擬態中の時は力を貸している為憑依しているサーヴァントも疲れるらしい。
なので実体化するには少し時間がかかるらしい。



「さて、個性を使ってみた感想は?」

「みんなの存在が如何に凄いかが分かりました……」

「そうかいそうかい、ならばマスターにはご褒美として私の魔力を分けてあげ……」

「い!ら!な!い!!」



顔を近付けてくるマーリンの顔を今出せる精一杯の力で押し返す。
ん〜、じゃないんだよ!!誰か助けて!!



「マーリン?」

「げっ」



マーリンによく似た声が上から聞こえる。声のする方へ振り返るとそこにはアーサーがいた。



「アーサー、良い所に!!この変態魔術師をどうにかして!!」

「勿論だよマスター」



こちらを見てニコッと笑った後、アーサーがマーリンを引きずってどこかへ行ってしまった。
……やっとゆっくり休めるよ。



「でも、なんだろう……。この感じ……」



生前……って言って良いのだろうか。その時より疲労が酷い気がする。感じる違和感に疑問を抱いていたとき、隣に誰かが座った。



「どうしたんだいマスター」

「えっ、さっきアーサーが引きずっていったはずじゃ……!?」

「マスターったら酷いなぁ」



隣に座り込んできたのはさっきアーサーに引きずられていったマーリンだった。



「君が抱いているその疑問、私には分かるよ」

「分かるの!?」



この違和感を知りたくて思わずマーリンに詰め寄る。



「今のマスターは前より魔力の量が少ない。それに、この個性は魔力を消費する事で使えるから私達に供給している魔力と合わせるとかなり消費している訳さ」

「そ、そう言う事か……」



違和感の正体は、私の魔力の量が生前の時よりも少なくなっている事だった。
今マーリンが言ったことが本当ならば、前世より魔力を使う機械が多くなりそうだ。

因みに、サーヴァントみんなとは全員同じタイミングで召喚し、契約した訳ではない。
彼らは私の魔力による暴走を押さえるために呼ばれた存在だった。本来ならこんな多くのサーヴァントと契約するつもりではなかったのだが、ある日を境に魔力を押さえる事ができなくなってしまい、11騎ものサーヴァントと契約を交わすことになってしまった。



「でも、このままじゃみんなを現界し続けられないよ」

「そうだね……あっ、マスター」

「ん?」

「私に良い考えがあるんだけど、どうかな?」



どうやらマーリンには何か案があるらしい。



「ほんと?なら、聞かせて欲しいな」

「ありがとうマスター。で、今思いついた事……正確には思い出した事なんだけど___」



マーリンが提案してきたものは、生前の私が暮らしていたカルデアと呼ばれる施設のあるシステムをこちらの世界でもやってみないか、と言う事だ。
カルデアには私が契約したサーヴァント達以外にも様々なサーヴァントがいた。……藤丸君と仮契約してたサーヴァントだけど。
で、そのサーヴァント達はカルデアの電力を魔力へ変換し供給されていた。そのやり方ができれば私の負担も押さえられる。



「それができれば……!」

「君の負担がかなり減る。だけど、次に考えなければならないのは電気代の方だよ」



カルデアでもかなりの電力がサーヴァント達の為に使われていた、と聞いたことがある。私は知らないけど、恐らくかなりの額が飛んでいたと思う。



「……聞いて貰えるかなぁ」

「言ってみなくちゃわからないよ」

「それって……」

「お願いするってやつだね」



お願いする、か。
生みの親にお願いというものをしたことがない。……お願いされる事めいれいを実行する事しか許されなかったから。



「君が親という存在に違和感があることを分かってるつもりだ。……だけど、両親かれらは違うんじゃないかい?……それに、彼女は君に頼られたいと思っているんじゃない?」



マーリンの言葉を聞いて、お母さんがいるキッチンへと視線を向けた。
視界には鼻歌を歌って作業をするお母さんが映った。





2021/03/17


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