第5節「泡沫の夢」
side.爆豪 勝己
「……×××病院の○○○号室、か」
グループチャットに送られてきたメッセージ……デクからのものだ。
あの場所の近くって事は相当危険な状態だったって事だ。
あのギルガメッシュって奴、ちゃんと名前を助け出せたんだな。
やり方は強引っつーか暴力的っつーか……まァ、彼奴の個性だって言うし俺より詳しいんだろう。
「行く行かねーの前に、あれだけの怪我しておいて起きてんのか彼奴……」
あの場から逃げようと彼奴に触れた時だ。
『身体が…痛くて……』
『かっ…ちゃん……にげ、て……!』
ガキの頃からどこか大人臭い雰囲気を出していた彼奴の泣いた所も、弱々しい所も、怖がる所も見たことがなかった。
だから、あの時の弱っている名前を見て驚いたと同時に苛つきが生まれた。
あの日……名前を認めたあの日
個性“だけ”なら彼奴が上なのはガキの頃から分かっていた。それでも俺の方が上だと思ったのは、その個性を扱えていないと思っていたから。
でもあんなの見ちまったら……名前の方が上なんじゃって思っちまった。
いくら敵に操られていたからとはいえ、ポテンシャルは同じだ。
つまり、彼奴が個性をどう扱うかによっては神野区ん時のような破壊工作が可能だって事だ。
……彼奴はガキの頃から分かってたんだ、自分の個性がどれだけ恐ろしいのかを。
「……」
ボーッと自分の掌を見つめ、目を閉じる。
目を閉じても浮かぶのは、機械的な雰囲気の名前、弱々しい姿の名前……俺を殺そうとした時の冷酷な目の名前。
瞼に焼き付くという表現が合ってる程に、あの時の光景を鮮明に思い出せる。それほどに頭に刻まれていた。
「!」
耳慣れた通知音が鳴る。
表示された通知には“切島”の文字が。
“お前も行くだろ? 苗字の見舞い!”
そのメッセージに俺は行かないという趣旨を伝え、そのまま寝ることにした。
……彼奴とは学校でも会える。
今は少しでも頭の整理に時間を費やしたいんだ。いろいろありすぎて、今は1人になりたい。
2024/05/04
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