第5節「泡沫の夢」
side.緑谷 出久
『神野区の悪夢』と呼ばれたあの事件から数日。
平和の象徴“オールマイト”は引退という形で世間から消えた。
敵連合に連れ去られていたかっちゃんと名前ちゃんは無事に生還。
かっちゃんは僕達の手で救ける事ができたが、名前ちゃんは彼女の個性であるサーヴァント等に救け出された。
かっちゃんはその日のうちに僕達が警察に送り届け、名前ちゃんは救出後病院へと搬送されたそうだ。
一方、その敵連合どうなったのかというと、あの場から姿を消した事で追跡が困難と判断された。
恐らくワープの敵の個性で何処かへ逃げたのだろう。
その敵連合のボスと思われる存在、オール・フォー・ワンはオールマイトによって倒され、刑務所に収容された。
……何故名前ちゃんについて知っているのかって?
実は家に帰った後、キャスターさん…マーリンさんが僕の元へ訪ねてきて来たのだ。
『うわああああっ!!?』
『おぉ、良い反応するね〜』
『ど、どうやって家の中に……?』
『私達サーヴァントは霊体化すると、物理的なものに干渉できなくなるんだ。玄関の扉を通り抜けることなんて造作もないことさ』
そういえば前に名前ちゃんがサーヴァント達は幽霊の類いだって言ってたっけ。
僕が想像するおぞましい姿じゃないし、会話もできるし意思もあるし、何かに触れることだってできる。本当に不思議な存在だ。
『結果からいうと、マスターは無事だ』
『! よ、良かったああぁぁ……』
『なんだいその言い方は。まさか助けられないとでも思ってたのかい?』
『いや、そういう意味じゃなくて……』
『あははっ、冗談さ冗談。そんな真に受けないでくれたまえ』
名前ちゃんはマーリンさんとあの場にいた金髪赤眼の男性…アーチャーさんによって謎の状態から元に戻したそうだ。
あの状態の名前ちゃんが脳裏から離れなくて、気になってマーリンさんに聞いたんだけど……
『すまないね緑谷君。これについては私もはっきりと分からなくてね』
『そ、そうなんですね……』
『でも安心したまえ。君が想像するようなバッドエンドは来ないからさ……きっとね』
マーリンさんはそう言葉を僕に掛けた後、金色の光を放ちながら消えた。
……名前ちゃん、どうしてるのかな。
見舞いに行くくらいなら大丈夫、だよね……?
2024/05/04
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