第4節「神野区の悪夢」


side.爆豪 勝己

※血流表現あり



「……?」


名前を抱きしめ、来るだろう痛みを覚悟していた直後だ。上から金属音が聞こえたのは。


「なんだ、この剣……?」


見上げると、俺の真上には赤い剣がヴィランの刀を受け止めていた。
その剣を持っているのは……細い腕。その腕を辿って誰なのか確認して……目を見開いた。


「名前……?」


あの赤い剣を片手で持っていて、それで且つヴィランの刀を受け止めているって言うのか……?!
その事実に驚いていると、名前の身体に変化が起こりだした。


「髪が……!」


茶色い髪が黒く染まっていく。
白い肌が焼けたような色に染まっていく。
その様子に驚いていると、倒れていた名前が起き上がり、ヴィランを刀ごと押し返していく。

サーヴァントって奴に擬態した名前は素の彼奴よりパワーもスピードも上がっている事は見ていれば分かってた。
だけど、性別差にまで勝ってしまう程のパワー…しかも、下から上に押し返すなんて、どんなパワーしてんだ……!


「ぐああッ!?」


遂に押し返してヴィランを弾き飛ばしたと思えば___名前はそのヴィランを持っていた剣で斬りつけたのだ。


「おい、名前……何やって」


んだよ、と言葉を続けようとした瞬間。
名前の背後が光ったと思えばそこにはナイフやら苦内やら……武器がそこに存在していた。

名前が腕を降ると同時にその武器は四方八方に飛んでいった。幸いにも俺は名前の背後にいるお陰で武器は飛んでこなかったが……。


「あれは名前なのか……?」


サーヴァントに擬態した場合、そのサーヴァントの特徴が現れると彼奴が言っていた。だから、あの状態はサーヴァントに擬態しているって事になる。

褐色肌になる奴は、名前が個性を明らかにした時に出てきたクソ生意気な事を言ってた白髪野郎だけだったはず……いや、俺が知らねぇだけ他にもいたかもしれねェ。


でも、合宿ん時の訓練で見た限り11種類のパターンがあった。その中に褐色肌になるパターンは白髪野郎に擬態した場合の1つだけだった。

二日しかなかったけど、俺が見た限り二日とも11のパターンだったから間違いないはず……。


目の前に見えている彼奴の背中には、さっきヴィランのボスから喰らった攻撃の怪我が癒えていた。

……展開が変わりすぎて、今目の前にいる彼奴が誰なのか本当に分からなくなってきた。


周りには名前が発生させた炎が燃え上がり、そこら中に武器が転がっている。
地獄絵図とも言えそうなその空間の中に立っているのは名前のみ。他のヴィランがどうなっているのか分からない。


「!!」


こちらを振り返った名前と視線が合った瞬間、金縛りに遭ったかのように身体が動かなくなった。
右目は赤く光り、服から見えている右腕と右足は気色悪い程に赤い模様みたいな形になっている線が入っていて、目の前にいる彼奴が……一瞬だけ、不気味で恐ろしい存在だと思ってしまった。

何もない空間からさっきの赤い剣とは別の剣が現れた。
それを持ったままこちらにゆっくりと歩いてくる。


「……っ!」


見下ろされたその視線は冷たく、顔は名前なのに別人のように見えてしまうその表情。……そして、ゆっくりと振り上げられた剣。
___まさか、俺を!!?


「名前___」


振り下ろされる……!!
その光景を動くことすら出来ず見つめていたときだ。


「!?」


___見覚えのある鎖。
その鎖が名前の腕に、剣に巻き付いていた。


「もう人を殺すのは嫌だと言っていたのは誰だ?……今やっている事は、我に宣言した事と違うではないか。なァ、名前よ」


後ろから聞こえる声。
振り返ると、そこには金髪赤眼の男がこちらに歩いて来ていた。


「……いや、違うな。貴様、何者だ」


男は余裕そうな表情を崩し、名前を睨み付けた。
対する名前は、男を目だけで殺せるのではないかってくれェに敵意剥き出しで睨み付けていた。





2024/03/12


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