第3節「林間合宿 後編」



次の日
合宿三日目



「はああああッ!!」

「良い動きだ」


今日も今日とて特訓である。
現在、四郎に擬態してカルナと対人戦闘を行っている。


「気を抜くなよー、みんなもダラダラやるな。何をするにも『原点』を常に意識しとけ。向上っていうのはそういうもんだ」


原点、か。
私の原点は前世のあの出来事だ。
ドクターやあの人の様に、私が何も出来ないばかりに犠牲になってしまった。……私の所為で誰かがいなくなるのは嫌だ。だから、誰かを守れる力が欲しかった。

今私がこうしてヒーローを目指しているのは、自分の願望を叶えたいという自己満足かもしれない。でも、その自己満足で誰かを救えるのなら良いと思ってる。


「それより、みんな!今日の晩はね、クラス対抗肝試しを決行するよ!しっかり訓練した後は、しっかり楽しい事がある!さぁ飴と鞭!」


そうだった。
今日は訓練が終わった後は、ちょっとしたお楽しみ会があるんだ。


「肝試し、か」

「肝試しっていうのは夏の夜に行われる日本の習俗の事だったか」

「うん。……とは言っても、私もあまり分かってなくて」


前世でも今世でも日本生まれなのに、肝試しについてきちんと分かっていない。怖い場所に行ってそこの恐怖に耐えられるかどうかを試す事らしいけど……。


「やったことがない、という事か?」

「ううん。今世こっちで何度か。小学生とか中学生の時にやった事はあるけど……正直、何が怖いのかさっぱりで」


ペアになった子達はすごく怖がっていたのを覚えている。一体何に対して怖がっているのやら、と思っていたのが本心だ。

確かに幽霊と呼ばれる存在はいる。現に、サーヴァント達はその類いだし。
で、その幽霊達は魂がなくなった器が眠る場所である墓地やら、深い森の中、人のいない廃墟等に多くいる。前世でも行った事あるしね。

あと、遊園地とかにはお化け屋敷っていうその名の通りお化けがいるような場所を作った極楽施設もあるそうだ。私は行ったことがないけど。こちらの方は人がお化け役をしてお客さんを脅かすそうだ。

……と、私が知っているものは以上だが、その恐怖を理解する事ができないのだ。


「それに……そんな事よりも私には怖いことがあるから」


私にとって怖いこと。
それは、大切な人が目の前で消えてしまうこと。
……それ以外、何が怖いといえようか。



***



「さて!腹も膨れた!皿も洗った!お次はーーー!?」

「肝を試す時間だあーーー!!」


今日の合宿も終わり、晩ご飯に肉じゃがを食べた後は昼間にも言っていたように肝試しが行われる。
その名も『クラス対抗肝試し』である。


「その前に、大変心苦しいが補修連中はこれから俺と授業だ」

「うそだろーーーー!?」


三奈ちゃん、顔すごい事になってるよ……。


「すまんな、日中の訓練が思ったより疎かになってたんで、こっちを削る」


「わーッ!?勘弁してくれーー!!」やら「試させてくれーーー!!」と言った悲鳴が聞こえる。……いーちゃん、必要な犠牲だったみたいな表情やめなさい。





2023/5/16


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -