第2節「林間合宿 前編」



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真っ暗だった視界が明るくなる。
見覚えのある光景……これは、夢?


『ダメだ!今の俺達じゃ、あの敵は倒せない!!』

『しかし、このまま逃げ切れません!』


あれは、私と立香君?
……待って、まさかこの夢は……!


『はい、このままではいずれ追いつかれてしまうでしょう』


隣を走っていた彼が立ち止まり、敵の方へと振り返った。


『マスター、藤丸殿、ここは撤退を。私が時間を稼ぎます』

『でも_____がっ』

『何を今更。マスターを守る事がサーヴァントとして最重要の役割です』

『ダメッ!!』


……伸ばした手は空を切った。何故なら、彼に突き飛ばされたからだ。


『例え、仮初めの命であろうとも、貴女の為になら……貴女だから、この命を懸ける価値がある』

『待って……ッ!』

『離れていて下さい。……巻き込まれますよ』


魔力をごっそり持って行かれる感覚。___宝具を使ったんだ。
あの時と同じように、自分の身を犠牲にして目の前の敵を倒す気だ!


『ナマエさん、離れよう!!』

『でもッ』


再び伸ばした手は離れていくあの人の姿を隠した。
……そして、目の前で敵が殲滅された。眩しいほど彼の宝具によって。


『……ッ!!』


風圧が消え閉じていた目を開けた。
そこにいた彼は輝かしい光を纏っており、まさに霊基が消滅しかけている所だった。


『どうしてこんな事を……』

『……貴女に生きて欲しいからです』

『それだったら、私だって貴方に……!』


今度こそ伸ばした手が彼に触れた。その手は彼の両手に包まれた。
その手から感じる温もりが段々と薄まっていき、それと同時に光の粒は増えていく。


『私を受け入れてくれた貴女だからこそです』

『……っ』

『命を懸けてマスターを守るのが、サーヴァントとして最重要の役割。……貴女を守る事が出来て、私は光栄でした』


彼の視線は私の後ろに立つ人物に向けられた。


『悔しいが、私はここまでのようだ。貴様に託すのは塵だが……必ずマスターを守りきれ、カルナ』

『……勿論だ』


再び視線が合う。


『マスター……いえ、ナマエ。……最期に、抱きしめてくれませんか』


断る理由なんてあるものか。
彼を還したくなくて、留めたくて。そんな思いで消えかけの彼の身体を抱きしめる。



『あぁ、貴女を……守れて、良かった』



目の前が眩しい光に包まれて___



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「!? はぁ……、はぁ……」


意識が覚醒した。
胸を押さえて乱れる呼吸を整えながら周りを見ると、寝息が聞こえ此処が宿泊施設であり今自分は合宿の最中だった事を思い出す。

三奈ちゃんがここにいるって事は、既に補修は終わったのか……。暗くて見えないけど、恐らく2時過ぎなのは確実だ。


「……」


もう一度寝ようと意識するも、先程見た夢の光景が瞼にこびり付いていて眠れない。
……少しだけ外の空気を吸おう。
寝ている女子達を起こさないように部屋を出る。


「……どうした、マスター」

「! ……カルナ」


廊下に出た瞬間、目の前に現れたのはカルナだ。もしかしたら霊体化した状態でずっとここにいたのかもしれない。

カルナ用に部屋を貸し出そうか、とマンダレイさんから言われたのだが、本人が断った。私的には部屋貰って置いたらいいのでは、と思ったのだが本人がそう希望しているので何も言わなかった。


「……ちょっと、夢を見ちゃって」

「夢?」

「うん。……前世の頃の夢」

「そうか」

「それ見ちゃった所為か眠れなくなっちゃって。だから、ちょっと外の空気を吸おうと思って」

「付き合おう」


カルナは夢の内容を深く聞くことなく、私の隣を歩いた。


「……カルナ。ちょっとだけ、私の話聞いてくれる?」

「それがマスターの頼みなら」

「……ありがとう」


話したい事があったから、二人っきりになれる機会を探していた。そんなとき、この合宿が計画された。良くも悪くもサーヴァントみんなは私を一人にしたがらない。特定のサーヴァントと二人っきりになる事はかなり難しい。

まさかこんな早くに話す事になるとは。合宿に慣れた頃にでもって思ってたんだけど……眠れないし、今話してみようかな。





2023/5/16


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