第2節「林間合宿 前編」



夕方
合宿一日目が終了し、今から夕食の時間だ。

……時間、なんだけど。


「さぁ、昨日言ったね!世話を焼くのは今日だけって!」

「己で食う飯くらい、己で作れ!」


「カレー!!」と言われた私達の前にはカレーの材料。……嘘、これだけ疲れているのに自分たちで作るの……?

カルデアの食堂だったらすぐにご飯出てくるんだけどなぁ……。あの赤い弓兵さんの料理が食べたくなってきた。あ、これ言ったらアーサーが拗ねるんだった。まあここにアーサーはいないけど。


「あっははははは!!全員全身ブッチブチ!だからって雑なねこまんまはダメね!」

「! 確かに、災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも、救助の一環……!流石雄英、無駄がない!」


「世界一美味いカレーを作ろう、みんな!!」と全員に声を掛ける飯田君。それに対するみんなの反応は元気のない「「「おぉー……」」」である。真面目だなぁ……。

と言うわけで体操服から私服へと着替えた後、晩ご飯を作るべく再び外へ。
なんかこの感じ、キャンプしてるみたいで楽しいな〜。カルデアでもキャンプっぽい事はしたけど、レイシフトしたと思えば漂流するし影の国の女王には妙に露出度の高い水着を着せられるし……。

一緒に来ていたカルナともう一人のサーヴァントはそっと目を逸らされたんだよなぁ……。特に彼は今でいう風紀委員みたいな人だったから余計に。あの頃はまだ感情の起伏があまり無かった頃だったから、今思うとちょっと恥ずかしいかったりする。


「マスター、料理はできるのか」

「そこそこね。前世まえにも作ってたし」


カルナと話していると遠くで爆発音が。……あーあ、壊してるよかっちゃん。



***



「「「いっただきまーす!!!」」」


と言えばすぐみんな目の前のカレーにがっつき始めた。相当お腹が空いてたんだなー。ま、私もなんだけどさ。
大人数だからかなりの量のカレーが残っている。なのでカルナも私の隣でもぐもぐと食べている。あ、ご飯粒付いてる。


「ランサー、こっちむいて」

「?」

「はい、とれた」


付いてたご飯粒を人差し指で取って見せると、「すまない」と一言返ってきた。ずっと付けておく訳にもいかないのでそのままパクッと食べた。


「名前ちゃん……慣れてるね」

「? 何が?」


お茶子ちゃんの言葉の意味が分からず、首を傾げる。


「さっき、ランサーさんに付いてたご飯粒食べたでしょ?そのことよ」

「あぁ、さっきの?アサシンとかよく口の周りに付けてるから、つい癖で」

「慣れって恐ろしいわね」


だからといって誰にでもしている訳ではない。ジャックとカルナは意図的にやる訳ないし。ネロは下心丸出しでよくやってくるけどね。まあ可愛いから態と引っかかってあげてるんだけど。


「あのさ……あまり大きな声で言えないんだけど、昼間ずっと視線が痛かったんだよね」

「峰田ちゃんね」

「やっぱりか……」

「仕方ないわ。だって名前ちゃんが言っていた武装状態ってもの、露出度が高いもの」


梅雨ちゃんのお陰で昼間の視線の正体は分かった。やっぱり欲に忠実だね、峰田君……。
確かに露出度がおかしいサーヴァントはいる。しかし私と契約しているサーヴァントは男性の方が多く、女性陣は少ない。そもそもサーヴァント11人と契約できていること自体がおかしいんだけどさ。

で、全体的に言えば露出度はそこまで酷くない。ごく一部が酷いだけだ。あ、ネロとギルの事ね。カルナはまあ私が擬態した場合のみヤバいらしいのでカウントしない。


「でも、思ってた以上に合宿疲れるねー。私生きて返られるかなー」

「大丈夫、生きて返れるよ」


こんなくだらない会話ができるのも合宿の醍醐味だと思う。疲れた後のご飯とかお風呂は最高だし。
……あぁ、こんな日常を過ごしてるとカルデアを思い出してしまう。最近、感傷的になりすぎだ。ホームシックという奴なのだろうか。

思い残す事はない。……と言い切れたらいいんだけど、やっぱりあの後の立香君達が気になっている所はあるんだ。


「名前ちゃん、大丈夫?」

「え?あぁっ、うん!大丈夫」


お茶子ちゃんに慌ててそう返した私を、カルナはじっと見つめていた。





2023/5/16


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -