第2節「林間合宿 前編」



「苗字、休憩が終わったら切島と対人しろ。武装してな」

「えっ!? でも、武装だと下手すれば傷つけてしまうかも……」

「切島の個性は受け続ける事で固くなる性質。刃物も簡単に壊すほどの強度だ。対する苗字の個性は強力な武器を使う。相手にはもってこいだ」


休憩にやってきたクラスメイトと、隣のクラスの人達に治癒魔術を使って少し休憩していた時、相澤先生からそう告げられた。


「俺なら大丈夫!思いっきりやってくれ!!」

「切島君がいうなら……」


本人もやる気のようだし、ここで断るのは相手に悪い。
それに、武器の扱いは正直できるようになりたいからこの申し出はありがたい。


「じゃあ希望の武器とかある?剣、刀、槍、ナイフ、飛び道具とか色々あるよ」

「武器のハッピーセットみてーだな……」

「何でも良いよ?」


切島君は暫く悩んだ後、カルナを見た。


「ちらっと見てたけど……あの人の武器を受けてみたい。俺が何処まで耐えられるのか試したい」

「……オッケー」


「ランサー」と呼ぶと、空を見上げていたカルナがこちらにやって来た。


「貴方の武器を受けてみたいんだって。貴方の力、借りていい?」

「勿論だ」


カルナが手を差し伸べる。その差し伸べられた手を自分の右手で握った。
瞬間、私の右腕に令呪が浮かび上がり、赤い光を放つ。


「___擬態、“カルナランサー”」


その言葉と同時にカルナの身体が金色の光となって消える。刹那、自分の身体にカルナの魔力が入ってくる。


「おぉ!体育祭で見た事ある!」

「うん。焦凍君との試合では、彼に擬態していたからね」

「じゃあ炎も出せるのか?!」

「勿論。ご所望なら炎を纏った攻撃も可能だけど」

「まずはその槍を受けきれるかだから、後で頼む!」

「了解」


切島君と会話しながらある程度広い場所へと移動する。
……あ、この状態じゃなくて。


「___こっちの方でって言われてた」

「はっ!?」


擬態したカルナの魔力がより濃くなる。魔力を倍に消費する事でカルナの武装姿へと変化したのだ。


「何分間にする?私は10分が限界なんだけど」

「え、えっと……俺もそれくらい、かな……」


また切島君が照れている。……あ、まさか!


「目のやり場に困ってるって顔だね」

「スミマセン……」

「確かにちょっと胸元開けすぎてるとは思うけど、まあ我慢して」


そんなことを気にする余裕、すぐに無くなるから。



***



「ぐっ……!」

「はあああッ!!」


金属音が辺りに響く。
カルナに擬態した私が黄金の槍でひたすら切島君に攻撃をしているからだ。
先程の照れ具合は何処へ行ったのか、目の前にいる切島君は焦った表情を浮べる。

先程相澤先生が言っていたが、確かに硬化した切島君はかなり固い。刃物を逆に折るって言ってたけど、流石に宝具は折れないか。そもそも宝具が折れるって聞いた事ないんだけど……折れるのかな。ちょっと気になる。


「ほんっとう固いね〜。何か悔しくなってきた」

「その言い方やめろよ!?本気で真っ二つにされそうなんだけど?!」

「しないしないっ。でも、本当に怪我してない?」

「ああ!傷1つもないぜ!」


宝具であるこの槍の攻撃を受けても尚、全く傷がつかないとは……。まあサーヴァントは契約するマスターによってステータスが若干変わるって聞くし……。もしかしたら私、前世の頃より弱くなってるかもなぁ。個性としてこの力が発現したときも魔力が前世の頃より大幅に落ちてたもの。


「じゃあ、さっき言ってた炎も加えてみようか」

「……頼む!」


槍に魔力を流す。
すると槍先に炎が現れる。


「直接放つ方が良い?それとも、さっきと同じようにひたすら打ち込む?」

「何か苗字楽しんでないか?」

「あっはは、多分擬態してるサーヴァントの影響かな」


いつも通りの擬態状態でさえもサーヴァントの性格が精神に影響してくるのに、武装状態まで段階を重ねるとその侵食は更に大きくなる。
カルナは普段は大人しいけど、戦闘となれば『戦士』としての彼が表に出てくる。擬態している私はカルナの戦士としての闘争心の影響を受けてしまうため、ちょっと戦闘を楽しんでしまうのかもしれない。


「傷はつかないけど、一発一発が重くて結構身体に響く……ッ」

「切島君も反撃してもいいんだよ?別に元の身体には一切傷はできないし」


カルナに擬態した時に試したい事があった。それは、カルナの持つ宝具“日輪よ、具足となれカヴァーチャ&クンダーラ”の効果だ。
この宝具はかなり強力な防御型宝具だ。切島君の攻撃にどれだけ耐えられるか知りたい。


「でも……」

「ほらほら。パンチだけでもやってみてよ」


納得してないような顔の切島君だが、覚悟を決めたように一発私に向けて拳を打ち込んだ。


「……あれ?効いてない?」

「うん。効いてないね」

「俺、力一杯やったつもりだったんだけど……」

「攻撃は当たってるよ。威力が激減されてるだけ」


私を見ながら頭上に「?」を沢山浮べている切島君。
隠す必要もないので、教えてあげる事に。


「答えは“これ”のお陰なんだ?」

「鎧と……イヤリング?」

「うん。この鎧がある限り、外側によるダメージはほぼカットされるの。内側からの攻撃には弱いけど……」


まだ効果としては言ってない事があるけど……まあ、言わなくても大丈夫かな。


「というわけで、残り五分間の対人戦闘を楽しもうよ!」

「おう!受けて立つぜ!!」





2023/5/16


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