第2節「林間合宿 前編」



現時刻14:00
あれから4時間半経過した


「皆々様、ありがとうございました……」

「褒美の件、考えておいてくださいね」

「うっ……」


四郎が忘れたかったことを放ったのを合図にカルナを除いた10人はその場から金色の光を纏い、霧散した。

完全に消滅したわけではなく、恐らく家に再召喚されているはずだ。
彼らは一度消滅した場合は家、または私の近くで再び現界するようになっている。
私が呼びだし目的が達成された後や擬態後は家に、それ以外の場合は私の近くで再び現界する仕組みだ。

……それ以外ってどれが相当するのかって?
今の所、相澤先生の個性を受けた場合だけだね……。


「おぉ〜!4時間半待って君だけか!」

「はい……。本当は連携しないとって分かってたんですけど、自分の個性じゃ難しくて。あと完全に私情です」

「なるほど〜」


どうやら私一人だけが先に宿泊施設に着いてしまったようだ。
そりゃそうか。魔獣をワンパンで倒してるんだもん、サーヴァント達がね。

私は彼らの魔力供給に体力を奪われているため戦闘は行っていない。
まともに歩けない状態なので、今現在武装を解いたカルナに背負って貰っている。
なので大変失礼な態度なのは分かっているが、ピクシーボブさんとカルナの背中に乗った状態で会話している。


「君がイレイザーが言っていた例の個性の生徒だね?」

「はい。……多分」

「私の魔獣達があんな簡単に倒されちゃうなんて!面白い個性だねー!」


どうやらワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの方達にも私の個性は伝わっているらしい。
そりゃあそうか。今回の合宿でお世話になるんだし。

あの土塊の魔獣を作っていたのはピクシーボブさんだったようだ。
確か私達を崖の下に落とした時、地面を操っていたからこの人で間違いないだろう。
ピクシーボブさんと話していると、宿泊施設からマンダレイさんが出てきてこちらに歩いて来た。


「12時半過ぎちゃったからお昼抜き……と思ったんだけど、君しかいないしお昼用意しようか?」

「え、でもみんなに悪いです……。それに疲労でご飯よりも今は寝たいです……」

「あら、そうなの?」


実は気を抜けばすぐに眠ってしまいそうな状態なのだ。
正直お腹空いていない……。


「サーヴァントの彼の分はどうしようか?」

「ランサー、どうする?」

「頂こう。少しでもマスターが楽になるのなら」


カルナに尋ねると、私の為に食事を貰うと言う。
……良い子過ぎる。


「じゃあ彼の分を用意して、貴女は部屋で休む……うーん、流石に何も食べないのは健康に良くない。貴女も少しだけ食べなさい」

「わかりました……」


マンダレイさんの指示で少しだけ口に入れる事に。
確かに健康に良くないよね。
食べれるだけ口に入れて、あとはカルナに全部あげよう。

先を歩くマンダレイさんの後をカルナが着いて行く。
……ずっと思ってたけど、コスチュームについてる猫の尻尾みたいな奴、どういう原理で動いているんだろう。
薄れそうになる意識を何とか繋ぎ止めようと脳を働かせる。


「……マスター。後で魔力を分けよう」

「えっ、でも……」

「こうなる事を想定して、ある程度温存しておいた」


カルナのこの発言で、先程から続いていた彼の発言に対する感情が爆発してしまった。


「……ランサー、愛してるよ」

「俺もだ、マスター」



***



「苗字一人だけか。まあ、お前の個性ならなんとなく想像できるか」

「あっはは……」


食堂へ入ると、私の到着をピクシーボブさんから聞いたらしい相澤先生がそこにいた。
食事を待っている間、相澤先生と少し話事に。
カルナは私の隣に座り、周りを見渡したりある一点を見てボーッとしたりしている。


「この機会に一つ聞きたい事がある」

「? はい」


聞きたい事。
私に聞きたい事とは何だろうか。
……あ、幼馴染の二人の仲の悪さとかかな?


「お前の事だ。緑谷と爆豪の仲の悪さが聞きたいのかと思ってんるだろ」

「な、なんで分かったんです?」

「いつも二人を気にしている所を見ているからな」

「!」


確かに私は普段から二人の事を気にしている。
まあ一番は二人が仲良くしている所が見たいってだけなんだけど。この前の期末試験で少しだけ希望が見えた気がする、と思ってたりする。


「まあ俺が聞きたいのはそこじゃない。……お前についてだ」

「私?」


何か私悪い事したかな……?
いや職場体験で悪い事というかルール違反をしたのは相澤先生も知っている事だし……。
一体何について問われるのだろうか。


「……お前、クラスメイトとの間に壁を作ってるだろ。それも上手く気付かれないように」

「!!」



相澤先生って普段から生徒の事をよく見ているとは思っていたけど……。まさか私が彼らと少し一線引いている事に気付いていたとは。
本当によく見ているんですね?





2022/2/17


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -