第12節「期末テスト」



二戦目
梅雨ちゃんと常闇君ペアVSエクトプラズム先生


「上手い!」

「あの二人じゃなきゃできない脱出方法!」

「うん、とても息のあった動きだよ……!」

「まるで私達みたいだね?」

「……はいはい」


マーリンの言葉に適当に返し、モニターに映る画面を見つめる。
まあ確かに息があってるかどうかと問われればあってる方だと思う。付き合いは長いといえば長いし、自然とどういう事ができてできないのか分かってくる。

常闇君の個性は私と似ているようで似ていない、という微妙な共通点を持っている。
強力な個性である事に変わりはない。


「コミュニケーション能力……この社会、地味に必要な能力。特定のサイドキックと抜群のコンビプレーを発揮できるより、誰とでも一定水準熟せる方が良しとされる」

「あの、今回テストと言いつつも意図的に各々の課題をぶつけているんですよね?」

「そうだね」

「常闇君と蛙吹さんは何が課題なんでしょうか?エクトプラズム先生の個性が二人の天敵だとは思えないし……」

「いや、天敵さ。常闇踏陰にはね」


常闇君にとっては?
お茶子ちゃんがリカバリーガール先生に理由を問うも「見てれば分かるよ」と言って教えてくれなかった。

エクトプラズム先生の個性は『分身』
……やはり何が天敵なのか分からない。


「常闇踏陰の個性は、間合いに入らせない射程範囲と素早い攻撃さね。けれど裏を返せば、間合いに入れば脆い」

「常闇君にそんな弱点が……」

「それで、『数』と『神出鬼没』のエクトプラズムか」


常闇君は分かった。
ならば、挙げられなかった梅雨ちゃんは?


「一方で蛙吹梅雨。課題という課題がない優等生。故に、あんたが言ったように強力な仲間の僅かな弱点をもサポートできるか否か……。あの子の冷静さは人々の精神的支柱となりうる“器”さね」


言われてみれば確かに梅雨ちゃんには弱点と言えるものがあるように見えない。
常に冷静。しかし協調性もある。
リカバリーガール先生が言うように課題が見当たらない彼女には、その冷静さを生かしたサポートができるかどうかが課題なのだろう。


それぞれに課題が課せられている。
ならば私は教師陣からどのような課題を与えられているのだろうか。


まず私にとってアクアが天敵であるという部分を見つけなければ。
お父さんの個性がどんなもので、どんなことが出来るのかを思いだそう。

すぐに浮かんだのは、自分の姿を背景と同化するほどに透明化ができる事。
先程目の前にいたのに分からなかったんだ。透ちゃんと同じくらい分からないかも。


しかしこれがメインなはずがない。これは間違いなくサブだ。
アクアは自身の水分を糧にその場に水を生成する個性の持ち主だ。

……前にいーちゃんが言っていた言葉を思い出せ。
とても早口で言っていたが全部聞き取っている。


個性が発現した頃にお母さんが言っていた『水人間』という言葉をそのまま受け取るのなら、物理攻撃は“一切”効かないという事だ。
火災現場から要請が入る事が多いから、消火活動においては多くの功績を残しているはず。
火災現場も様々な状況がある。それを踏まえると威力は高めと思っていた方がいい。大きく見積もって最大出力は……恐らく大洪水程。

その原動力が『自身の水分』だと言うのは前にお母さんが言っていたから、これは間違いない。
家にいるときはよく水分を取っている所を色んな所で見かけるし、職場体験でもかなり早いペースで水分補給を行っていた。

私の試験会場は水辺がメインである場所だ。
間違いなく教師側に有利な会場を選んでいるはず。
そういった場所でどれだけ被害を抑え、相手を無力化させるか。


「カフスが掛かってる!」

「クリアだ!!」


いーちゃんとお茶子ちゃんの声で我に返る。どうやら考え込んでいたようだ。
モニターを見上げると梅雨ちゃんと常闇君が試験をクリアした事がアナウンスされた。
完全に一人の世界に入ってしまっていたらしい。


「考え込んでいたようだけど、作戦でも立ててたのかい?」

「うん。……とりあえず相手の…アクアの個性を振り返ってたんだ」

「なるほど。敵の行動を見極めるのも作戦を立てる上で重要な事だ。纏まったら教えてくれたまえ。君の考えがどのように纏まったのか興味がある」


これは私の試験だ。
だから自分で作戦を立てないと。





2022/2/15


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