第12節「期末テスト」
「あれ?デク君に名前ちゃん!二人も見学?」
「うん」
「そうだよ〜」
しばらくの間いーちゃん、私、マーリン、リカバリーガール先生の四人だけだった空間にお茶子ちゃんが入ってきた。
私の後ろにくっついている人物を見てびっくりしていたなぁ。
誰がくっついているのかというと、言わずもがなマーリンである。
拗ねているのか知らないが、さっきからずっと後ろから抱きついてて離れない。正直暑いから今すぐにでも離れて欲しい。
「そういえば二人はどうしてここに?」
二人にそう尋ねたが、いーちゃんは何となく察する事ができる。……かっちゃんはいーちゃんと話し合う気がないんだろう。
しかしお茶子ちゃんはどうだろう?確かペアは青山君だったはず。
「僕はみんなと先生の戦いを見たくて。こんな機会中々ないし。それに……まあ、何となく分かると思うけど……話し合いはしようと思ったんだけど聞いて貰えなくて……」
「そっか……」
「やっぱり……」
やっぱり予想通りだ。
聞く耳持たずだったか。……もう、試験だっていうのに。
「あ〜、こっちは……話が通じない感じ? だから、みんなの戦闘を少しでも参考にしようと思って」
通じない……とは?
一体青山君は何をしていたんだ?
まあ分かる事は、お茶子ちゃんも私と同じくみんなの試験を参考にして策を考えようとしていたって事だ。
「名前ちゃんは?」
「私もお茶子ちゃんと一緒。実はお父さん……アクアに対しての策が全く浮かばなくて」
「あー……。デク君達とこの印象が強くて忘れそうだったけど、名前ちゃんとこも強敵だよねぇ……」
お茶子ちゃんと話しているとモニターに映像が表示される。
準備が整ったようだ。
一戦目は砂藤君、切島君ペアVSセメントス先生だ。
「セメントス先生が作った壁を壊した!」
「頑張れ切島君、砂藤君!」
二人の前に次々と現れる壁を砂藤君と切島君は次々と破壊していく。
この調子なら……!
「___このままじゃダメだ」
「え?」
「どうして?」
私とお茶子ちゃんがモニターに表示されている光景に喜んでいるのに対し、いーちゃんからは厳しい言葉が出てきた。
「切島君と砂藤君の個性は確かにすごいけど、時間に制限がある。対してセメントス先生は恐らくそれがない……時間が経てば経つほど切島君達が不利になる……!」
「そんな……!」
「この実技試験は、試験を受ける生徒の天敵となる先生を意図的にぶつけている……!」
流石いーちゃん。
切島君と砂藤君の個性をもうここまで調べ上げている。
それに、もうこの試験の意図に気付いているなんて。
「その課題を如何にクリアできるかが鍵なんだと思う」
「その通りだよ」
いーちゃんの考えに正解だと言ったのは、私の隣にいるリカバリーガール先生だ。
「自分達の出番が来るまで、対戦する教師との相性をじっくり考えるこったね」
対戦する相手との相性……。
私とアクアの相性は良い悪いがあるのか正直分からない。
そう思っていると、切島君と砂藤君のリタイアした事がアナウンスされた。
「嘘……ここまで一方的に……!」
「個性の相性が悪過ぎたんだ」
あれでハンデ有り……。
これは思っていた以上に過酷かもしれない。
リカバリーガール先生が二人の治療に向かい、モニタールームは私、マーリン、いーちゃん、お茶子ちゃんの四人になった。
……二戦目は梅雨ちゃんと常闇君か。
二人の出番を静かになったモニタールームで待っていると、脳内に声が響いた。
『すごいね、彼』
「……うん。昔から個性については、誰よりもよく見て調べてるよ」
急に話しかけてきたと思えばまさかのテレパシー。
すぐ側にいるんだから口に出して話せばいいのに、と思っていた時。
『これは、私達について辿り着くのも時間の問題かな』
マーリンが何故テレパシーで会話をしてきたのかが分かった。
……確かにその話は大きな声で話せないし、話す訳にはいかない。
私が前世の記憶を持って生まれ変わっている事と、前世の世界がどんな環境だったのか。
「……そうかもね」
もしかしたら、既に感づいているかもしれない。
……サーヴァント達の真名を含め、私自身について。
いーちゃんの真剣な横顔を見つめていると、視線に気付いたのか「何?」と首を傾げてこちらを見た。
「何でも無いよ」といーちゃんに言うと更に不思議そうな表情を浮べてしまった。
こればっかりは君にも話せない。
……ごめんね、昔から隠し事ばかりで。
2022/2/15
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