第12節「期末テスト」
三戦目
飯田君と尾白君ペアVSパワーローダー先生
モニターに映る映像を見るからに、どうやら二人は逃げの一択のようだ。
確かにあんなに足場が悪いとなれば二人の個性は生かせないだろう。
「逃げる、か」
「でも相手がそう簡単に逃がしてくれると思うかい?」
「……そうだね」
前世で何度も相手から逃げた。
明らかに“今”勝てないという相手は何人もいた。
……でも逃げてばかりではいざと言うときに勝てない。
『ここは撤退を。私が時間を稼ぎます』
『でも_____がっ』
『何を今更。マスターを守る事がサーヴァントとして最重要の役割です』
「……っ!!」
どうして今思い出すんだ。
……いや、これは私自身が私に言い聞かせているんだ。逃げを選ぶなと。
そうだよ。
思い出せ、何故私がヒーローになりたかったかを。自分で戦えるようになりたいからでしょ。
「マスター?」
「……うん? 何?」
「顔色悪いよ。大丈夫かい?」
「大丈夫だよ」
「……本当かい?」
「ほんとだってば! ……逃げる選択肢はない、無力化する事を考えます」
「……何を考えてたのか知らないけど、今は聞かないで置こう」
「そんなことより、彼らはクリアしたようだよ?」とマーリンに言われモニターを見上げると、ゲートをくぐった尾白君と土に埋まっている飯田君が。
……リカバリーガール先生、何故埋まった飯田君の画面表示をアップにしたんです?
「次は百ちゃんと焦凍君か。相手は……」
「相澤先生だね」
私の呟きが聞こえていたのか、こちらに緊張の表情を見せたいーちゃん。
……相澤先生といえばやはり個性『抹消』だ。
もし私の相手が相澤先生だったら、擬態拒否にサーヴァント達を一定時間現界拒否というダブルパンチがあるため、試験として成り立たないだろう。
「個性を消す……彼とはやり合いたくないねぇ」
「やっぱりみんなには効くの?」
「風魔小太郎の件で分かっているだろう? 君が彼の個性に掛かった場合、私達は強制的に消滅してしまい、暫く現界できなくなるんだよ」
「霊体化ではなく?」
「そうだよ。君の個性の源である魔力を封じられ、令呪も封じられる。……どうやら私達は君の個性の一部らしいから、消される対象に入るのさ」
ものすごく嫌そうな顔をしている……。
あの時…個性把握テストの時、あまり感情を露わにしない方である小太郎があんなに嫌そうな声を出していたのだ。
二人の反応をみるからに、相当嫌なんだろなぁ……。
***
四戦目
百ちゃんと焦凍君ペアVS相澤先生
先に結果を言ってしまうとクリアだ。
「個性を真っ正面から使うのではなく、か。あれは、百ちゃんだから出来る芸当だね」
最初は轟君が捕まり百ちゃんは逃げ出していたが、助けに戻り少し時間を掛けた後にクリアした。まあざっと言うとこんな感じかな。
「道具を創造する……ね。キャスターとしては負けたくない相手だ」
「キャスターはすごいって感じのもの作れないじゃん」
「むぅ、酷いなぁ」
ぶーぶーと言いながら後ろから私の身体を揺らしてくるマーリン。
あーもう、なんでこんなにも構ってちゃんなの、この人は!!
「次はお茶子ちゃんの番だね!頑張れ!」
「頑張って、麗日さん!」
「ありがとう名前ちゃん、デク君!」
お茶子ちゃんはこちらに手を振りながらモニタールームを後にした。
彼女のペアは青山君だ。まともに話し合えていなかったようだけど、大丈夫かな……。
「名前ちゃんはアクアに対しての対策、浮かんだ?」
「それがいまいち浮かばなくて」
「そ、そうなんだ……。知ってると思うけど、アクアの個性は___」
いーちゃんちゃんはキラキラとした表情でアクアについて話し始めた。
その言葉を一文字も聞き逃さないように聞き取る。
「……それでそれで!」
……流石としか言えない。
様々な個性を調べまとめ上げ、攻撃パターンの数、弱点になり得る部分を予測する。
ここでいーちゃんの知識を借りられるのは正直とても助かる。
「……もしかして、アクアの個性について知らなかった……?」
「………はははっ」
「知らなかったんだね……」
視線をそっと逸らせば苦笑いが返ってきた。
確かに、憧れてるくせに個性知らないのかよって思うよね。
「職場体験ではあんまり事件とかなくてさ。あったのは……うん」
「あぁ……。名前ちゃんはアクアと別行動して僕達の所へ来たんだよね」
「うん。でもいーちゃんが教えてくれた情報を使って、何とか考えてみるよ!」
「相手はNo.5ヒーローだから、僕のまとめた知識以外の何か持っているかもしれない。だから、今日はアクアについてもっと知れる……!」
いーちゃん嬉しそうだなぁ。
ヒーローの事になると視野狭くなるからねぇ……。
……改めて聞くと、本当に詳しく纏めているんだろう。
いーちゃんは私の個性についてどう纏めているんだろうか。
そのことがただ純粋に気になった。
2022/2/15
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