第1節「再会」



ギルとお母さんのお陰で私は『個性』というものを知った。
超能力的なもの事を『個性』呼んでいるようで、この世界のほとんどの人は何かしらの個性を持っているという。
超能力と言われてもピンとこなかったけど、魔術みたいなものだとギルに言われたので理解できた……と思う。

個性というものは『発動型』『変形型』『異形型』の3系統に別れているようで、一番多いのが発動型の個性らしい。
異形型の個性というものは、常に個性が発動しているようで見た目が人間離れしているのが特徴らしい。因みに私は見た目が人間なので異形型の個性ではないだろう、とお母さんが言っていた。
なので消去法でいくなら私の個性は『発動型』か『変形型』のどちらか、またはその2つの個性が合わさった『複合型』というものかのいずれかではないか、とお母さんが予想した。



「……って!さっきギルは私の個性の一部って言ってたよね?それはどういう……?」

「名前よ。我のみがいると思っているのか?」



ギルの言葉に心臓がドクンッと脈打った。
……ギルが今世ここいるという事は、他の皆もいるって事?



「まさか、忘れたとは言わんよな?」

「そんな訳ないじゃない……!なら、皆はどこにいるの……?」



生前契約を交わした彼らはどこにいるの?
いるのなら今すぐにでも会いたい。
サーヴァントみんなの顔が頭の中で浮かぶ。



「お前が呼ぶ・・のだ、名前」

「呼ぶ、って……」



まさか、皆を召喚しろっていうの?
サーヴァントを召喚するには膨大な魔力が必要だ。……それも、聖杯の補助のないこの世界なら尚更………と思っていたのだが。



「あれ……?」



この感じ……“懐かしい”。
私にはその懐かしいものの正体が分かった___サーヴァントみんなだ。



「あの、お母さん……お庭に行っていい?」

「勿論よ。貴方の家なんだから、好きにしなさい」



私によく似た顔がこちらに向かって微笑みかける。
…普通なら嬉しい事なんだろうけど、私にとっては違和感しかなかった。



***



私とお母さん、ギルは家の庭に出た。
英霊を召喚する時って周りに余裕が無いといけないからね。
どうやら私の家の庭は思った通り広いみたいだ。大きい噴水におしゃれな塀……こういうのって洋風っていうのかな。



「ねぇギル、何か用意した方がいいかなぁ?魔法陣書くとか」

「必要ない。令呪それを使えばよい」



ギルが指さしたのは私の右腕に浮かび上がった令呪だ。
令呪の使い方は勿論覚えてる。だけど、そんな簡単に使って良いのかな……。



「使っても大丈夫なの?」

「我が知る令呪とは違うようだ。名前の魔力で作られたものだろう」



令呪というものは、聖杯戦争と呼ばれるものの参加資格として聖杯から付与されるもので、サーヴァントに対する絶対命令権だという。
私は聖杯戦争に参加したことはないから詳しいことは知らない。…参加したくないけどね。
で、私ともう1人……『藤丸立香』という、私と同じく残ったマスターだった年下の男の子が持っていた令呪は本来の令呪よりその命令権が強くないらしい。その代わり回復する事ができたが……。
私の魔力でできているというのなら、カルデアの令呪の様に回復できるのかな……?



「……よし」



私の知る令呪と同じだという事を信じて、意識を集中させる。



「“おいで、我を守りし者よ”」



言葉に召喚の意思を込め、令呪を発動させた。
赤い光が自分の右腕から発生した瞬間、



「ぅわッ!?」



発生した風圧に思わず目を瞑る。
子供の姿である自分では耐えられなかったのか、地面から足が離れてしまった。
落下の恐怖で目をギュッと強く瞑った時、誰かが私に触れた。



「大丈夫かい、マスター?」



上から聞こえた中性的な声に目を開ける。
視界に入ったのは、宝石の様なエメラルドグリーンの瞳。
驚いている間に自分の足は地面に着いていて、彼女は私の身体を確認している。



「うん、怪我はなさそうだね」



にこりとこちらに向かって笑う綺麗な顔が視界に入る。
どこか幼さの残る顔立ち人物……『エルキドゥ』が私に視線を合わせるように目の前でしゃがんでいた。





2021/03/10


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