第4節「とある女性マスターのオリジン」


side.芦戸



「あっ、苗字!」



教室の扉を開けると、窓際の席に誰かいる。
あの席は……苗字だよね?もしかして、寝てる?

閉会式にも欠席していてどこにいるのか分からなかったんだけど、先に戻ってたんだ!
そう思って駆け寄ろうとした。



「うわぁっ!!?」

「しー……すみません、もう少し寝かせておいて頂けないでしょうか」



突然現れた人に驚く。
あれ、この人少し前に苗字が紹介してくれたサーヴァントって人だ!名前は確か……あ、ルーラーさんだ!
ルーラーさんが口元に人差し指を当てて「静かに」と言ってるように見えたので、慌てて自分の口を抑える。



「ありがとうございます。ホームルーム……?が始まる前には起こしますので」



自分の席に戻り、もう一度苗字の方へ視線を向ける。
苗字は窓側に……ルーラーさんの方へ顔を向けているから表情は見えない。
でも背中が上下しているのを見ると、本当に寝ているだけみたい。



「名前ちゃん、疲れてるみたいね」

「うん。……ねえねえ、梅雨ちゃん」

「なあに三奈ちゃん」



梅雨ちゃんに話しかける。
目線は苗字のまま。



「なーんか、あそこだけ雰囲気違うよね〜」

「そうね」

「やっぱり付き合ってるよ!!」



恋愛話は大好きだ。
苗字は否定してるみたいだけど、イケメンさんの表情を見たらどう考えても恋人同士にしか見えないんだもん!

でも何だろう……?
恋人同士に見えるのは間違いないんだけど……。



「なんだか不思議よね、名前ちゃんとルーラーさん」

「不思議?」

「ええ。まるでずっと昔から一緒にいた・・・・・・・・・・・ような感じ」

「あぁ、それだ!」



信じられないけど、苗字が言うにはあのイケメンさんも個性なんだって。



「でも、苗字の個性なんだから昔から一緒じゃないの?」

「私が言いたいのは……ありえないけれど、今よりもっと前って意味よ」

「う、うーん……なるほど?」



梅雨ちゃんの言葉を聞いて、苗字とイケメンさんの方へ視界を移す。

どう見ても、あのイケメンさんの表情が悲しそうにしか見えないんだよね……。苗字の頭を撫でる手つきが優しそうに見える。
こういうのって壊れ物を扱うような感じって表現があってるのかな?

苗字が個性の話をしてくれた日から、サーヴァントと呼ばれる存在が頻繁に姿を現わすようになった。
あのイケメンさんはどちらかというとよく見かける人だ。

……今思ったんだけど、サーヴァントの人達って苗字の個性なんだよね?
でも、苗字が操ってるようにも見えないし……不思議だな〜。



第4節「とある女性マスターのオリジン」 END





2021/07/24


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