第4節「とある女性マスターのオリジン」



「……貴女の最期の命令おねがい、果たしましたよ」



声が聞こえた
真っ暗だった視界にある人物が映る
……それは私だったもの



「貴女が守りたかった者達は無事ここを脱出しました。……これで、貴女が思い残す事はないでしょう」



どうやら私の器だったもの・・・・・を抱えているらしい
視界に映る氷が、あの襲撃が幻ではなかった事を思わせる

少し破壊されてしまっているけど、確かに記憶に残っている
……この部屋は、私が使っていた個室だ



「時期にここは崩れるでしょう。……ここに置いていってしまう事を、どうか許してください」



生前私が使っていたベットに私だったものをそっと置く
暗くて見えづらいけど、視界に白い髪がちらりと映った
……あぁ、貴方の記憶なんだね



「他の者は既に退却されました。……今残っているのは私だけです」



消え行く意識の中、令呪を使った
助からない事が分かっていたから、私の全てをサーヴァントみんなに預けたんだ

良かった
あのような状況で無事脱出できたのなら、この命を投げ出した意味があったと思えた
……少しだけドクターみたいだな、なんて思っちゃったのは内緒



「……そろそろ時間のようです。我がマスター、名前。どうか、安らかにお眠りください___」



金色の光が溢れ、視界が白に染まった。





***





「……! 気がついたんですね、マスター」

「……しろー」

「しっ。……ここは学校ですよ、マスター」



視界に入った彼の名を呼ぶ。
……あぁ、私そういえば体育祭で轟君に負けちゃったんだった……。
凄い疲労だ。一つも動きたくない。

……あ、お礼を言わなきゃ。
あの記憶を見た理由が分かったよ……ずっと側にいてくれてたんだね。
側にあった手を握る。



「……私の命令おねがい、叶えてくれたんだね」

「勿論。……何よりも貴女の命令でしたから」

「めいれいじゃないよ。……お願い」

「ふふっ」



握っていた手を握り返される。
……あたたかい。



「四郎の記憶が見えたよ。……私の遺体、あの場所に置いてくれたんだね」

「はい。……あの場所が1番休めると思ったので」

「ありがとう、しろー……」

「……まだ眠いのですか?」



その言葉に頷く。
何故か、酷く眠たいんだ。



「……仕方ないですね」



その言葉を最後に身体が浮く感覚がした。
何故か心地よくて、再び私の意識は暗闇へと落ちた。





2021/07/24


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