第4節「とある女性マスターのオリジン」
まさか道具として生まれてきた自分が使役する立場になるとは。
最初は自分には無理だ、と思っていたが。
「サーヴァントは君達にとって使い魔……道具に過ぎない。だけど君はそれを嫌がる。……どうしてだい?」
アーサー王から言われた事。
勿論分かっていた。サーヴァントという存在は私と同じ道具でしかなく、使えなくなってしまえばそこで切り捨てられるものだと。
昔の私だったら、その知識しかなかったからこんなに悩むことはなかったんだろう。
「私は作られた存在……道具です。だからこそ、貴方をどう扱えば良いのか分かりません」
「そうかな。君の采配は初めてとは思えないほど的確だったよ。……もしかしたら、君が同じ立場だったからこそ、できていたのかも知れないね」
「同じ……立場」
アーサー王は言っていた。
サーヴァントと同じ使役される側だったからこそ、どのような指示が的確なのかを無意識に考えているのでは、と。
「でも、君がマスターで良かった。座に記録されているものによると、あまり好ましくなかったマスターもいたみたいだし」
「サーヴァントは別の場所などで召喚されたとしても、その当時の記憶は保持していないと私に与えられた知識が言っています」
「厳密にはね。でも、強く印象に残っていたりすると、自分が体験した事ではないのに思い出のように実感を持っていたりするそうだよ」
「なるほど」
彼との会話は楽しい。
使い魔としての知識が多かったため、こんなに人間らしいというか何というか……”優しい”サーヴァントがいるとは思わなかった。
「あと、僕に敬語なんて不要だよ、マスター」
「しかし、アーサー王……これは私に染みついたものです。外せ、と言われても……」
「ロマニからお願いされてね。……道具として生まれてきた君を、どうか人間にしてやってくれ、と」
「……私にはまだ、人間らしいというものがよく分かりません」
「ならば僕が導こう。……君のサーヴァントとして」
始めに彼が私のサーヴァントになってくれて良かった。
だからこそ、レイシフト先で出会った人間達と、自分と契約を交わした6騎のサーヴァントと友好的な関係を築けたのだから。
2021/07/24
prev next
戻る