novel | ナノ





※スタンド、スタンド使いについて独自の解釈ありです





元々のスタンド使いをA。
最近スタンド使いになった疑いのある者をB。
襲ってきた順で纏めると、以下のようになる。


“灰の塔”はAの可能性が高い。
アヴドゥルが言っていたが、以前から数々の飛行機事故や火災事故、ビル火災を起こして数百人規模の犠牲を出していたらしい。
しかし本体が死亡したため詳しくは不明。

“暗青の海”はAもしくはBの可能性がある。
しかし本体が死亡したため詳しくは不明。

“力”はBの可能性が高い。
しかし本体が死亡したため詳しくは不明。

“悪魔”はAの可能性が高い。
「アメリカインディアンの呪術師」という触れ込みの有名な殺し屋であったため、以前から財団も“超能力者”なのではとマークしていた。
しかし本体が死亡したため詳しくは不明。

“黄の節制”はAもしくはBの可能性がある。
倒したがその後行方不明。現在捜索中。

“吊られた男”はAもしくはBの可能性がある。
ポルナレフの妹、シェリーを殺害した当時に既にスタンド使いであったようだが、この事件はDIOが復活して1年後に起こっている。
疑惑のエンヤ婆の息子という事もあり、いつスタンドに目覚めたのか定かではない。
しかし本体が死亡したため詳しくは不明。

“皇帝”はAである。
ジョセフのスタンドにより確認済み。

“女帝”はAもしくはBの可能性がある。
しかし本体が死亡したため詳しくは不明。

“運命の車輪”はAもしくはBの可能性がある。
縛って放置したがその後行方不明。現在捜索中。

“正義”はAもしくはBの可能性がある。
スタンド使いの増殖に一番関係があると思われる人物。
しかし本体が死亡したため詳しくは不明。

“恋人”はAもしくはBの可能性がある。
倒したがその後行方不明。現在捜索中。

“太陽”はAもしくはBの可能性がある。
倒したがその後行方不明。現在捜索中。

“死神”はAもしくはBの可能性がある。
赤ん坊である事でBの可能性が大きいが、現在行方不明。捜索中。

“審判”はAもしくはBの可能性がある。
倒したがその後行方不明。現在捜索中。

“女教皇”はAである。
ジョセフのスタンドにより確認済み。

“ゲブ神”はAである可能性が高い。
本人の言動から幼少期からのスタンド使いであったようだが、死亡したため詳しくは不明。

“クヌム神”、“トト神”はAである。
襲われていた事にすら気が付いていなかったが、SPW財団の調査とホルホースの記憶から存在が発覚。
その後入院中の兄弟それぞれをジョセフが調べたところ、Aであった。

“アヌビス神”はAである。
刀に憑いているスタンドで、本体は大昔に死亡している、という証言がテレンスから得られた。

“バステト女神”はAである。
ジョセフのスタンドにより確認済み。

“セト神”はAもしくはBの可能性がある。
倒したがその後行方不明。現在捜索中。

“オシリス神”はAである。
DIO復活以前からスタンドにより人の魂をコレクションしていたため、元々のスタンド使いである。

“ホルス神”はAもしくはBの可能性がある。
おそらくイギーが倒した。テレンスによると鳥のスタンド使いであったらしい。詳しくは不明だがBの可能性が高い。

“アトゥム神”はAである。
やや記憶があやふやな所があったが、ジョセフのスタンドにより隅々まで確認済み。
DIOの側近であり、スタンドの秘密も知っていた数少ない人物だったが、その起源については知らなかった。

ケニーGはAもしくはBの可能性がある。
イギーが倒したがその後行方不明。現在捜索中。

“クリーム”はAもしくはBの可能性がある。
テレンスによるとどうやらBの可能性が高いが、ヴァニラがDIOの狂信者であり秘密主義者であったため、彼の一切が不明とのこと。
本体が死亡したため、詳しくは不明。


「…と、いうことじゃ」


つまり、現在財団の監視下にある、“皇帝”、“女教皇”、“バステト女神”、“オシリス神”、“アトゥム神”は全て元々のスタンド使い。
死亡した“灰の塔”、“暗青の海”、“力”、“悪魔”、“吊られた男”、“女帝”、“正義”、“ゲブ神”、“クヌム神”、“トト神”、“アヌビス神”、“ホルス神”、“クリーム”、そして“世界”と、
現在行方不明の“黄の節制”、“運命の車輪”、“恋人”、“太陽”、“死神”、“審判”、“セト神”、ケニーG達の詳細は不明である。


「…疑わしい奴等は皆死んじまったか行方不明ってことか…」


やれやれと言って、承太郎は険しい表情で溜息を吐いた。

SPW財団が、戦闘不能になった敵スタンド使い達の捕獲に乗り出せたのは、DIOとの決着が付いてからだった。
それまでは主に、エジプトでの情報収集や東・東南・南・西アジアに渡る国境を超えるにあたっての手続き、一行の旅路をサポートする事に力を費やしていた。
(潜水艦の手配等、かなり無茶な要望にも全力で応えていた)
また、日本への渡航者の確認、空条邸近辺の徹底した警備等に人員を割いていたため、敗走した敵に感けている余裕等無かったのだ。


「チッ…もっと徹底的に奴等を病院送りにでもしてりゃあ良かったってのか…。
だが、Jガイルに関してだけは、絶対に生け捕りって選択肢は無かったぜ」

「命のやり取りをしていたんだ…あいつを生け捕りなんてやれと言われても無理だっただろう。
それにあの時の僕達に敵を捕獲する余裕は無かった。
エンヤ婆を捕まえられたのはたまたまだったが、それもあの結果だ」


当時ジョースター一行が第一に優先していたのは、一刻も早くDIOとの距離を縮める事だ。
DIOの正確な居場所を突き止める事はSPW財団が担っていたため、襲ってくる敵は早急に倒し、先へ進む事が一行に出来る最前の事だった。

勿論“世界”の能力を知る事も重要だった。しかし、金で雇われた者達にあのDIOが秘密を曝け出している訳が無い。
事実、ホルホースはジョセフが尋問した際にDIOの能力が“時を止める”事だと知った程だ。


「仮にあの婆さんの頭をハーミットパープルで覗けていたとしても、スタンドの能力については調べただろうが、その“起源”を調べようとは思っておらんかったじゃろうな」


結局エンヤに尋問を行えず、その後もあの館で直接対決に至るまで、DIOの忠臣を尋問する機会も余裕も無かった。


「まあ生け捕りが可能だったのは“運命の車輪”とかかのォ…あれは流石にお巫山戯が過ぎとったかもしれん」

「あの状態から逃げ果せたとはな…」

「親切なヤツがいたんだろうよ」


返り討ちにし、岩場に括り付け、【わたしは修行僧です。神聖なる荒行をじゃましてほどいたりしないでください。】という看板を隣に立てて放置したのだが、ポルナレフの言ったように誰かが彼を救出したのだろう。


「それを言い出すと“太陽”もだよなァ。
…アイツ捕まえてDIOの前でスタンド使わせたらどうなってたんだろな?」

「…砂漠のど真ん中であんなお荷物拾えなかっただろう」


“太陽”の本体の太った男の頭には、破壊力とスピードがAのスター・プラチナが全力で投げた大きめの岩がヒットしていた。
鏡越しに当たったため辛うじて息があったが、“太陽”による攻撃で披露困憊の状態だった一行は男を放置して身体を休めるためにその場を後にしていたのである。


「結局捕獲出来たのは、比較的最近倒し、まだ病院のベッドで身動きが取れなかった者達だけじゃ。
エジプト上陸前の敵にはほぼ逃げられておる」

「もっと徹底的にブチのめすべきだったか…」

「いえ、それは捜索開始の時期が遅かったせいです。皆さんのせいではありません」


リンダの父は首を振ってそう言った。SPW財団が予想していたよりも、彼等の生命力はゴキブリ並みに強かっただけなのだと。
ジョセフの報告を受け、“運命の車輪”、“太陽”だけでなく、“黄の節制”、や“恋人”など、数ヶ月は動けないだろうと見積もっていたのだ。
その者達も悉く逃げ果せていたのだから、スタンド使いの生命力を舐めていたのだと。


「そこで我々は、行方不明のスタンド使い達を見つけ出すために、細かく編成を組んで調査を開始しました」


スタンド使い1人に対して、10人程のメンバーが組まれた。敗走者だけでなく、死者の調査も行うために、約20チームが編成された。
リンダの父は、死亡した者の中でも最重要人物であるエンヤ・ガイルについての情報を集めるために、エジプトに残っていたのである。
しかし、行方不明のスタンド使いを捜索する側のチームには事件が多発した。


「…まだ4名と連絡が取れておらず、1名は重症で発見され、その後亡くなりました…」

「な…!」

「おいおい!何でそんな危険な事を一般人の財団の人間に続けさせてんだよジョースターさんッ」


財団の現状を知り、花京院もポルナレフも驚愕した。
自分達ですら過酷であった敵スタンド使いの捜索を、一般人である財団員達が続行していたのだから。
スタンド使い同士ですら、敵スタンド使いを戦闘不能にするのも捕獲するのも困難だというのに。


「あくまでも居場所を探るまでと指示を出していたんじゃ…あの旅の時と同じく…
報告を受けて前線に出る役目はワシがする事になっておった」


しかし、その考えは甘かった。
どれだけ優秀であっても、そこに何か異常があっても目視する事すら出来ない一般人に、身を守る術など無かったのだから。


「旅のサポートをしていた時にも死者が出ていました。
そのため、調査だけでも死の危険がある事、自分達が圧倒的に不利だという事を理解して皆行動していました。ですがそれでも…」

「…ヤツラの警戒心の方が上だったって事か」

「ワシ達に一度敗北した事で過敏になっておるんじゃ…!
こっちはスタンド能力を得た方法を聞くだけのつもりだったというのにッ」


ジョセフが苛立たしげにテーブルをガンと拳で叩く。承太郎も花京院もポルナレフも、皆険しい表情を浮かべていた。
旅の道中で何度も世話になったSPW財団には皆恩義を感じていた。
特に花京院は二度に渡る闘病生活の中で少し気を許す仲になった財団員も何名か出来ていたため、焦燥感に駆られた。
未だに行方が分かっていない者達も、無事ではないだろう。旅の間から数えると、もう片手では足りない程犠牲者を出してしまっている。


「奴等を野放しにすれば一般人相手にも悪事を働くかもしれません。
復讐を望む者達同士が徒党を組むかもしれないという不安も十分にあります」

「…被害が出たのは、どのスタンド使いの調査チームですか」

「“黄の節制”、“恋人”、“死神”、“セト神”じゃ…」

「…!」


その名前を聞き、ポルナレフは自分にかけられた“セト神”の能力を思い出して顔を歪め、花京院は“死神”を野放しにしてしまった事を悔いて項垂れ、承太郎は無言で拳を握り締めた。
止めを刺しておくべきだったーーその思いがどうしても湧き上がる。


「その4名の調査は、ワシが一旦打ち切らせた。
これ以上SPW財団員の犠牲者を増やす訳にはいかんからな…
しかし、朗報もある。
“運命の車輪”、“太陽”の居場所はある程度目星がついたと先日報告があったんじゃ!」

「まじかよジョースターさん!」

「この休暇が終わればすぐに向かうつもりじゃ。また行方を眩まされては敵わんからな」


そう述べてから、ジョセフは一旦口を閉じた。暫しの間沈黙したジョセフに、一同は注目する。
そして、次に彼から発せられる言葉を待った。






×
- ナノ -