「ありゃ、また取れた。松本その辺にいないかなあ」
「松本くん……」
――『今日も夏目のこと想ってるよ。』
机の引き出しにしまい込んだ伝言。
思い出し、俯く。
好きなんて気持ち、わかんないよ。
友達として好きならわかるけど。
異性として?
恋愛小説を何冊も読んだってわからない。実感できない。
――松本くん。私が好きって、どんな気持ち?
出来ることなら、そう問いたい。
「呼ばれて飛び出て、松本鷹雪です!じゃーん」
「うわ、地獄耳?」
「失礼な!」
保健室に入ってきた彼を、将斗さんはいつものにやりとした表情で迎える。
私の髪の毛よりも少し朱みがかった茶髪の彼は、深緑色の瞳で私を見つめた。
その深緑色は上だけ縁のない、変わった黒縁眼鏡で隠されている。
口元は髪の毛のようにやわらかく笑い、「くまよさん、貸して」と言った。