father
「ありゃ、また取れた。松本その辺にいないかなあ」

「松本くん……」



 ――『今日も夏目のこと想ってるよ。』


 机の引き出しにしまい込んだ伝言。
 思い出し、俯く。


 好きなんて気持ち、わかんないよ。

 友達として好きならわかるけど。

 異性として?


 恋愛小説を何冊も読んだってわからない。実感できない。


 ――松本くん。私が好きって、どんな気持ち?

 出来ることなら、そう問いたい。



「呼ばれて飛び出て、松本鷹雪です!じゃーん」

「うわ、地獄耳?」

「失礼な!」



 保健室に入ってきた彼を、将斗さんはいつものにやりとした表情で迎える。

 私の髪の毛よりも少し朱みがかった茶髪の彼は、深緑色の瞳で私を見つめた。

 その深緑色は上だけ縁のない、変わった黒縁眼鏡で隠されている。


 口元は髪の毛のようにやわらかく笑い、「くまよさん、貸して」と言った。


prev next // 目次
しおりを挟む


不器用 親バカ

54/102
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -