ブラウン泥棒
 □■□■

 嫌な夢を見た。

 背中が鈍くずくんと痛む。

 涙が頬を伝うような気配。冷たい。あんな夢で俺は、泣いた?

 日の光が目に入り、眩しい。


 額には嫌な汗が浮かぶ。息も乱れる。途切れ途切れに畳の匂いが鼻に入る。


 ――まだ過去を引きずっている俺はなんて弱いんだ。



「お、おはっ、おはようございますっ」

「あ?」



 前髪を掴んだ手のすき間から見えた、栗色の髪をした女の子。

 しばらく目があって――彼女が驚いたような顔をして、俺も驚く。



「ごめっ……あ、別に、その、……」

「怖い夢、見てたんですか?」



 無意識に触れていた彼女のやわらかな頬。彼女が、俺の手を優しく包み込む。

 畜生。なんでそんなにあいつに似た笑顔をするんだ。


 舌打ちをしかけて、ぐっと堪えた。



「……起こしにきてくれたの? ――って、え?」

「あ、……ぅ」

「ちょ、お、おい」



 触れたままの手に伝う冷たい一滴。


 栗色の瞬きと同時に、また手が濡れた。


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不器用 親バカ

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