ブラウン泥棒
「私も怖い夢、見るんです。起きるといつも泣いてて。お父さんが、こうやって、手を握ってくれると、すごく落ち着くんです。あはは、私も怖い夢……思い、だし、て」



 ついには白く細い喉を震わせ泣き出す。頬に触れたままの俺の手から、彼女の振動とあたたかさを感じる。栗色の瞳から溢れる涙の粒は次第に大きくなり、手をふやけさせた。

 身体を起こして彼女の頭を撫でてみると湿った瞳で俺を見る。

 綺麗な澄んだ瞳をしていた。それでも、情けないくらいに顔はぐちゃぐちゃだった。

 そんな顔は見たくなくて、すこしためらってから胸の中につめこんだ。


 筋肉質な俺とは正反対の、華奢すぎる身体。

 優しく抱き留めるとやわらかかった。



「大丈夫だから……」

「うっ、うぅ……んっ」



 押し殺す声に、胸が痛む。「泣けば」と囁けば嫌だと首を振った。



「も、もう、大丈夫です……ご、ごめんなさい。服、あの」

「いいよ。……あのさ。俺も、言ってくれれば、いつでも手くらい握ってやるから」



 寝起きだからだろうか。
 そんなことを言えたのは。

 朝だからだろうか。
 涙を拭って笑った彼女が眩しかったのは。

 寝起きの頭じゃわからねえや。


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不器用 親バカ

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