ドアを開けてみると障子はまだ閉じられており、室内は暗い様子だった。
「し、失礼しまーす……」
泥棒のように物音を立てないよう、慎重に室内に足を踏み入れる。畳の沈む音が小さく鳴る。
室内は一昨日まで物置だったのが嘘のようにすごく綺麗に片付いていた。お父さんの仕事っぷりに拍手だ。心の中でそっと拍手をした。
当の壱くんは部屋のすみに敷かれた布団で寝息をたてている。
苦しそうな表情。
安眠はできていないみたい。……もしかして、私のせい? じゃ、ないよね……?
「……――子」
「あ、えっ? は、はい!……あれ?」
名前を呼ばれた気がしたけど、壱くんのツリ目は閉じたまま。二重の痕がきっちりとついたまぶたがやさしく包んでいる。
変わったことといえば、眉間に寄るシワがますます深くなったことかな。
――怖い夢でも見てるのかな。
私もいつか見た悪夢を思いだし、身震い。
どうしていつまでも忘れられないのだろう。悪夢というものは。
涙が出そうになって、そっと障子を開いた。
朝日が身体と心を温めてくれる。
――元気ださなきゃ。
今日はいつもと違う日曜日。私が探していた幸せな日曜日なのだから。
ねこパンチをされた箇所を弱く弾き、気合いを。
「い、壱くん。朝ですよー……ん?」
薄く開いた壱くんの目。
壱くんは急いで顔を隠すように、大きな手で前髪を掴んだ。