nostalgia

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花の香りと水の清さに酔いしれて


 靴を脱いで裸足になると、恐る恐るわたしはそれを湖へと浸けた。ひやりとした感覚が突き刺さるように肌へと伝わって、思わず足の指をきゅっと丸める。穏やかだった水面には、緩やか波紋が広がってゆく。

 白いロングワンピースの裾を、まるで姫君のように少し気取って摘む。すっと鼻から息を吸えば、冷ややかで澄んだ空気が肺に満ちてゆく。内側から浄化されていくようで、今までに味わったことがない心地がした。

 空を見上げればどこまでも果てがないようで、周囲を見回してもただ浅い湖が続くばかり。空気は咲き誇るように甘い花の香りがし、どこかとろんと肌にまとわりつくように思える。


「……ここは、一体どこなのかしら」


 蹴り上げるように足を上げ、きらきらと水滴を散らせた。その様はあまりにも美しく思え、わたしの口元は無意識に綻んだ。思考が次第に霧散してゆき、全てがどうでもよく思えてくるようだった。

 くすくすと少女めいた笑みを零し、ただ水の感触を肌に感じながらくるくるとわたしは回る。くるくると、くすくすと、何も考えず、まるで甘い空気に惑わされたかのように。

「……嗚呼、何て、心地いい」


花の香りと水の清さに酔いしれて
彼女は延々と幸せそうに、くすくすと笑みを響かせるのでした。

(フォロワーさんのイメージss。いをさんをイメージして書かせていただきました)

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