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初っ端の授業は選択科目の占い学らしく、同じく占い学をとったハリーとハーミーに手を引かれて北塔とやらに向かう。気分はドナドナ。何故両手を引っ張られねばならんのだ。大丈夫だよ、と声をかけ離そうとしても、二人はがっちりと私の手を握り離そうとしなかった。諦めて溜息を吐くと、ロンは同情したような顔をした。表情だけね。
先日の豪雨の雨雲が残っているのか、空気はほんのりしっとり湿気を含み、冷たい風が吹く。ただついて行っているだけなので、次からは迷子になりそうだな、と北塔を見てぼんやり思った。

「そういえば、ナマエも数占い学をとっていたわよね?時間被るけれど、どうするの?」
「ああ、同じように被っている子を集めて振り替え授業やるって。丁度魔法生物飼育学と同じ時間になるんだったはず」
「そうなの。同じ授業じゃないのね、残念だわ」
「ハーミーもとってるの?」
「聞いてよナマエ、ハーマイオニーったら全科目取ってるんだぜ。頭おかしいよな」
「えっ、すごくね?時間割どうなってんの?」
「時間割についてはひみつなの!」

時間割がひみつってどういう事だ、と思いつつそうなんだと返す。酷いハードスケジュールだな。身体壊さないといいけど。
北塔の中に入るが、踊り場しか見当たらない。行き止まりじゃねえか。この壁の何処かに教室が隠れている、とかそういうパターンかもしれない。ここは忍者屋敷か。

「あ、あそこ」
「……天井?」

シビル・トレローニー、とハーミーが表札らしきものを読む。教授の名前らしい。つまり天井から入る教室。忍者屋敷ではないけどびっくりハウスだった。勝手に扉が開き梯子が下りてくる。センサー式かな?
スカートの女子はあとに梯子を上る。教室はなかなかに好みが分かれるタイプのところだった。屋根裏部屋のカフェみたいな。もしかして教授はカフェやりたかったのかもしれない。私は少し物が多い印象を受けたし、先生の宝石ジャラジャラ感はうるさい感じがしてあまり好きじゃない。見た目がうるさいのだ、見た目が。主張が激しいともいう。おかけなさい、と言われて座った椅子はふかふかだった。

「占い学へようこそ。あたくしがシビル・トレローニー教授です。おそらく、皆さんはあたくしの姿を見たことがないでしょうね。……学校の、俗世の騒がしさの中にしばしば降りてまいりますと、あたくしの“心眼”が曇ってしまいますの」
「……ワァオ……」

すっげえのが来たぞ。心眼とな。第三の眼とかそういう類のやつか。でも確かになんでもござれの魔法界では違和感がない。占い、というのもあながち間違っていないだろうし、そう考えると占い師という職業はこちらでは結構良いのでは。いや、別にここで生きて行く気はないんだけど。
限られた者にしか見えない、という先生の目は一点の曇りも無く私達を見ている。その目には何が見えるのか。先生は唐突にネビルに祖母は元気かと問いかけた。

「あたくしがあなたの立場でしたら、そんなに自信あるお返事は出来ませんことよ」

ネビルは驚き、少し不安げな顔になった。まあ、確かに離れているからすぐに答えられないだろう、みたいなものはある。
先生はそのままゆったりと今後の授業の過程を離していく。私はそれをメモした。今学期はお茶の葉、夏は水晶玉で来年は手相学と言う流れらしい。手相も占いに……なるか、そういやあれは占いか。先生はそのまま炎の呪いが起こるとかイースターでは誰かとお別れするとか物騒なことをかましてくる。結構グイグイ来るタイプ…だよな、見た目からして。更にラベンダーに対して10月に恐ろしいことが起こるとかなんとか言い、銀色のポットを用意した。ネビルに割ったら次はブルーのカップにしろと言った次の瞬間、ネビルはカップを割ってしまった。いや、ビビリのネビルにそれ言う?

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