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はらり、ページがめくられた。
” 出 せ ” ”君は、生きたいか”

” きみは、いきたいか ”




「やあ、こんにちは!はじめましてだね、新しい子かな?ここの病棟は入れ替わりが激しくてね、あまり友人が出来ず寂しいんだ。よかったら少しお話しようじゃないか。そうだな、君はどうしてここに?私は……記憶がね、ないんだ。自分の名前もわからなかったくらいさ、名前を教えられた今でも本当にそれが私の名前なのかよくわかっていない。ああ、悲観してはいないよ、それもまた僕の運命だ。それで君は───とてもシャイなようだね、いいんだよ無理に話さなくて。話したいと思ったときでいいのさ、ただ目を合わせてくれると私は嬉しい。君の見ている先には何があるんだい?………うん、そうだね、今日も床が綺麗に掃除されているね!えぇと、それで……君はどれくらいここにいるんだい?すぐに退院かい?そうだな、君の見た目からするとまだ学生だろう、ならもうすぐお別れかな。また友人がいなくなってしまうのは寂しいなあ、私はまだまだここにいなくちゃいけないようなんだ。そうそう、友人といえば名前がまだだったね。私は──あれっ!?その名札…君、もしかして手紙の主かい!?すごい、すごいな、なんて偶然なんだ、いやこれは運命!?手紙を私にくれたのは君だろう?ありがとう!とても嬉しかったんだ、私は私のことがよくわからないけれど、以前の私は君の役に立てていたようでほっとしたんだ。……がっかりしたかい?私はしているよ、きっと私に記憶があったのなら、君との再会はもっと素晴らしいものになっていたはずさ。……うん、そうだな、提案なんだけれど、お互いの紹介はまた今度にしないか?次会うまでに私は以前の記憶を思い出すよう努力しよう、そうしたら素敵な再会になるだろう?そして、私がもし思い出せなかったのなら、もう一度名乗り合おうじゃないか。素晴らしい出会いになるよ。それまでに君の名前は大切にとっておくよ、もちろん私の名前もね。でも──次会うときは君の綺麗な目を合わせて、声を聞かせてくれると嬉しいよ。楽しみにしている、ではまた会おう友人よ!」

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