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誰もいないホグワーツの医務室の住人となってから数日がたった。毎日スネイプ先生の作ったというまずい薬を意図を知らずに我慢して飲み、マクゴナガル先生やマダム、ときにはフリットウィック先生なんかが来てくれて、しかし私は呑気に話せるような心境じゃなかったため少しだけの会話が続いている、そんなある日。

「聖、マンゴ?」
「ええ、聖マンゴ魔法疾患傷害病院と言います」
「そこに、私が?」
「ほんの数日の短期間だけですよ。……今のあなたには、心の療養が必要です」

ウォーウルフとかいうのらしくホグワーツを辞めてしまったというルーピン教授が私へ贈ってくれたというスミレの砂糖漬けを少しずつちびちび食べているとき、マダムポンフリーが難しい表情で私にそう話した。
心の、療養。おかしいな、私の心はどこも悪くないはずなのに。夢の世界で入院なんて変な話だ。そう思うが、どこか納得している部分もある。あくまで先生たちの中で、私の両親は13年前のマグルを巻き込んだ殺人事件で巻き込まれた被害者、既に故人らしい。一体私の脳はどれほど想像力豊かなんだ。起きることが出来たら、転職して小説家にでもなれそうな勢い。

「明日からの数日間です。すぐに帰って来れますから安心してください」

マダムが優しい声でそう言った。ああ、頭が痛い。



ハッ。ガバリと体をベッドから起こすと、そこはもう医務室ではなく、灰色の部屋だった。柔らかい医務室の真っ白なシーツは固くギシギシ音のなるパイプベッド。ドアも窓もやっぱりない。もう、怒る元気もない。聖マンゴとやらは無しか。
バタリと倒れるようにベッドへまた横になると、埃が薄らと舞った。あークソ、またこれか。夢は深層心理を映すとかいうけどね、私の心の奥底ではこんな部屋を思ってるってワケ?私何か悩んでる?なにか、悩んで、

「……かえりたい」

かえりたい、あの家に帰りたい、お母さんに会いたい、どうしてこんなことに。夢ならお母さんを映したっていいのに、こんなに望んでいるのに、どうして起きてくれないんだ。 じわりとにじむ涙を腕で拭う。
泣きたいときもあるさ、夢の中だって泣くんだ、大丈夫、まだいける、私はまだいける。 わかったことは一つ、私はきっとホグワーツから出れない。聖マンゴもアウト、でもホグズミードと列車はオッケー。変な話だ、まだ制作されてないエリアみたいな。RPGでいう、レベルで解放されるエリア的な。もしレベル解放式ならレベ上げをするだけだ。考え方がめちゃくちゃだって?わぁってるよバーロー。なんでもいいんだ。

「……ぜってえ帰るぞこの野郎」

負けねえええ!勢いよくバシンと打った頬がじわりと、しっかりと痛みを認識した。

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